チームワーク

「つながり続けたい」と思える価値創出にこだわるDNAへ

デジタルデバイスが普及し、企業と生活者が直接つながる時代となった現在、システムインテグレーションという事業を生業としてきたNTTデータのメンバーはどんな想いでデジタルマーケティングに取り組んでいるのか。生活者と企業の新たな長期的関係性構築をテーマにデジタルマーケティングに取り組む、SDDX事業部 部長 内藤一章が自らの言葉で想いの源泉、“DNA”について語りました。

【記事執筆者】

内藤 一章
株式会社NTTデータ ITサービスペイメント事業本部 SDDX事業部 マーケティングデザイン統括部 部長

企業から送るメッセージが生活者に届かない?

今、私のスマートフォンには3,000件超の未読メールが格納されています。そのほとんどが過去に利用したことのあるサービスや企業からのプッシュ型のコミュニケーションです。既に私用スマートフォンのメールボックスの着信アラームを止めた自分がいます。

私用スマートフォンのメールボックス

それぞれの送り手は、内容を吟味し、一言一句を工夫し、送り届けていると思います。実際に私たちも自らこのオウンドメディアを運営し、メルマガという形で情報発信をしていますので、その裏側の労力が良く分かります。そして、その送り手は、開封率やコンバージョンという数値を見ながら、より届くための試行錯誤を日々行っています。

こうした善かれと思った積み重ねが、”未読の3,000件”に繋がっているとしたら…。これが私に限らない話だとしたならば…。デジタルテクノロジーが駆使によって、さらに多くのプッシュコミュニケーションが流通したならば、その先にある未来はどうなるでしょうか。

仕組み作りをゴールとするDNAの功罪

「NTTデータという会社が、マーケティングという領域でも事業立地を立てる」、そんな想いで私たちSDDX事業部は2019年4月に産声を上げました。コンサルタント、エンジニア、セールス、データサイエンティスト、ビジネスディベロッパーなど、さまざまな出自や業務経験を持ったメンバーと混ざり知恵を出し合いながら、日々取り組んでいます。

これまでに、レジ無し店舗サービス“Catch&Go®”の企画・実証、Twitterの全量データを再販・活用できる米Twitter社とのパートナーシップを活かした新たなサービス開発、お客さま企業の会員管理・ロイヤリティ管理を支援するサービス”CAFIS Explorer®”の提供など、さまざまな活動を進めてきました。

元来、私たちはシステムインテグレーションという事業を生業とし、社会インフラや各業界・企業の重要システムを多数ご提供してきました。ですので、完遂に対する執念は社員一人ひとりにDNAとして埋め込まれている自負があります。

しかし、昨今のデジタルテクノロジーを活用した”攻めのIT活用”と呼ばれる領域は、仕組みをいかに活用し最大限の効用を得るかが勝負どころです。つまり仕組みの構築を完遂することはあくまでスタートポイントであり、そこからどのように効用創出を支援し、新たな高みをめざす課題を見つけるか、そしてこのサイクルをいかに高速に回すかが最重要です。

何を今さら当たり前のことを、と思われた方も多いと思います。しかし、システム構築受注をスタートとして、システム構築の完遂をゴールとするDNAが染みついた私たちに、完遂後の効用創出まで視野に入れるというのは、頭では分かるけれども中々手が動かないという現実もあります。どうしたら良いのか分からない。「それって儲かるの?」「それより新しいものづくりをした方が良いではないか?」と言った、ものづくりDNAにアレルギー反応が生じる現場の現実が、正直起きます。ここに私は危機感を持っています。

ここで冒頭の未読メールの話に戻ります。メールを送るという仕組みは正常に動いている。しかし正常に動いていたとしても、私自身の未読メールは溜まっていく、つまり届きにくさを助長させていたとしたら…。本質的な効用からかけ離れている現実に誰も着目しない、誰も幸せな状態になっていないことに注目しない。そんなプレーヤーであってはならないと思っています。

当社が提唱する「4D Value Cycle」のDiscover(目利き)とDrive(活用)を重視

顧客時間・奥谷孝司さんとの対談から得た学び

先日、株式会社顧客時間 共同CEO、オイシックス・ラ・大地株式会社 専門役員の奥谷孝司さんと対談をさせていただく機会がありました。「顧客から見てつながっている価値のない企業は顧客の日常から消えていく」、というセンセーショナルな帯を付けた新書「マーケティングの新しい基本」を題材とした対談でした。

この対談を通じて奥谷さんと共感する点がとても多くあったのですが、対談記事には表出しない点として次のような気づきがありました。「顧客から見てつながっている価値のない企業は顧客の日常から消えていく」という文の「企業」という言葉を「当社」に置き換えて捉えなおしてみました。そうすると、全く同じことが言えるではないか。私たちは、基本的にBtoBtoXの事業モデルの左側のBの立ち位置です。「顧客(企業)から見てつながっている価値のない当社は顧客(企業)の日常から消えていく」、そんな危機感を率直に感じました。同時に、だからといって私たちが企業に寄り添って、企業からつながっている価値を感じてください、というのも違うな、とも思いました。

私たちのお客さま企業は、どのようにして「顧客からつながり続けたいと思える」価値を作りこめるか、ここに最大限の知恵を注いでいます。ましてや何が正解か確固たるものが言い難い時代です。ですので、お客さま企業も多様な知恵を掛け合わせて挑戦したいと思っている。ゆえに、私たちもお客さま企業と同様に「顧客からつながり続けたいと思える」価値とは何か、その価値を議論し、その価値を体感いただく体験をデザインし、その体験に必要な機能を具備するといった営みを進める必要がある。というシンプルな私たち自身の行動指針を改めて再確認しました。

DNAに変化が生まれる萌芽

奥谷様との対談後、「マーケティングの新しい基本」を購入し、チーム全員に読んでもらいました。そして先日、担当内で4~5名の小集団を作り議論をしました。流石に多様なバックグラウンドを持ったメンバーで作られた組織であるがゆえに、その意見も多様性に満ちていました。一部をご紹介します。

・「つながり続けたいと思える価値」という言葉は、企業側の主張のようにも感じる。生活者はもっと企業とつかず離れずの距離感を期待しているのではないか。
・生活者がつながりたいのは企業ではなくて、使用・利用体験そのものや、他の使用者などではないか。つまり、企業はその橋渡し役に徹する姿勢が求められるのではないか。
・私たち自身がBtoCの事業経験に携わり、つながり続ける価値の手触り感を持つことが大事ではないか。
・今、某企業の生活者とのコミュニケーション設計を行っているが、どうも企業都合のシナリオの議論になりがちで、ここを変えていきたい。
・あるべき姿からのバックキャストしていくためにも、現状を企業側と正しく認識合わせるプロセスをしっかりやりたい。

私は、この小集団の議論から、少しずつではあるものの、私たち自身が大切にするものが変わりつつある萌芽を感じ取りました。元来持つ確実に完遂するDNAを大事にしつつ、そこにこの新たな萌芽を融合させることができれば、世の中に十分価値を提供できる個・集団が作れるのではないかと感じました。

マーケティングとは市場を創造すること

マーケティングとは非常に難解で、各者各様の解釈があり、幅の広い言葉です。

先日、当社が資本業務提携をしているネットイヤーグループ株式会社の佐々木社長との会話の中で、「つまるところ私たちが企業のマーケティングを支援するとはどういうことだろうか?」という話をしていました。佐々木さんは「マーケティングという言葉はMarket+ingでできているでしょ。Marketって市場ですよね、市場をingする、つまり市場創造って捉えています」と。私の中では横文字が漢字に置き換わる以上のスッキリ感がありました。

なるほど、新しい市場を創造するために新しい商品・サービスを作る、新しい市場を創造するために新しい顧客との関係性を作る。これであれば因数分解して、必要な尖りの要素と、必要なケイパビリティ、必要な経験値・実績、それぞれ誰に担ってもらうかが明確にできそうだなと思いました。これを受けて、今後3年を見据えた、私たちなりの事業立地の再定義を現在は進めています。

Who we are. What we do.

マーケティングが市場創造だとすると、今まさに私たちがさまざまな業界のお客さま企業と取り組んでいる、リアルとデジタルを跨ぐ生活者接点をデジタルテクノロジーによってアップデートする取り組みや、生活者接点が変わることによって新たに必要となる企業内業務の変革も、マーケティングと言えます。

ちょうど先日、当社の公共分野のあるチームが佐渡島の住民とタウンミーティングのようなセッションを行う場にリモートで参加させてもらいました。そこで議論されていた地場の環境・社会・経済を循環させる議論も、新たな循環型社会を創造するある種のマーケティングと言えます。つまり、当社が取り組んでいるほぼ大半の事業は新たな市場を創造する活動であり、マーケティングであると解釈してもいいのかもしれません。

ですので、企業のマーケティング部門に従事したことがある/ないといった事実はそれほど重要ではないと感じています。勿論、多様性のある人財こそが宝なので、さまざまな出自の方を迎え入れてフュージョンを起こすという営みはさらに加速させていきます。そして、奥谷さんから学んだ「つながり続けたいと思える価値」をいかに定義し、実現するか。そして実現したものを検証しながらアップデートし続けていくか。こうしたことに変わらず取り組み、経験値を貯め、テクノロジーとノウハウを掛け合わせたものをアセットとして、世の中に還元していく営みを愚直に進めていくという活動に、変わらず邁進していきたいと思います。

おわりに

当初、本執筆の企画タイトルは、「NTTデータがデジタルマーケティングに取り組む理由」でした。企画検討にあたってさまざまな方と会話し、業務の合間で執筆アイデアを考えた結果、別にマーケティングは特別な活動ではないし、世の中に流通するMarTechを取り扱えますといった矮小化した話が言いたいわけでもない。読んでいただいたみなさまに、等身大の私たちを知っていただき、少しでも顔が透けて見える状態を作ることが大切なのではないかと思うに至りました。タイトルは手前味噌なものとなり、何もキャッチ―ではありませんが、企業のみなさまとのコラボレーションを通じて生活者にとって価値を感じられるサービスを提供しつづける「黒子役のアイデンティティの今」を少しでも感じていただけたなら幸いです。

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