サービス&チャレンジ

生活者データから未来を予測し、消費財・小売業界の新たな価値創出へ

現在、ビジネス環境は絶えず変化し、企業活動にもスピードが求められています。そのため、これまで人の経験に依存しがちであった製品企画やマーケティング業務においても、データ活用が不可欠です。こうした背景の中、NTTデータは生活者データ分析の技術を起点にバリューチェーンやサプライチェーン全体を含むデジタル変革をもたらす企業をめざしています。今回はSNSなどの生活者データからインサイトを分析し、企業のマーケティング業務への活用に取り組んでいる、中山忠明さんに生活者データ活用の未来をテーマにお話を伺いました。

中山 忠明(なかやま ただあき)
株式会社NTTデータ
ITサービス・ペイメント事業本部
SDDX事業部 マーケティングデザイン統括部
デジタルマーケティング担当 課長代理

生活者データドリブンな企業活動が求められている

―社会環境が大きく変化する昨今、企業における商品開発やマーケティング業務はどのように変わり、どのような課題があるでしょうか。

中山さん:インターネットやSNSの普及により、さまざまな価値観や意見が広く共有されるようになりました。また、自分の価値観を大切にし、より自分に合ったものを求める傾向も強まっており、生活者のニーズや価値観は多様化し、急速に変化しています。企業はこうした生活者の変化を迅速に捉えてニーズに対応することが難しくなっており、大きな課題となっています。そのため、生活者の行動、特性、嗜好などをデータドリブンに収集、分析、活用することの重要性が非常に高まっています。

―企業活動におけるデータ活用はどの程度進んでいるのでしょうか。

中山さん:データ活用には3段階あると考えていて、1段階目が業務やマネジメントなどで活用するフェーズ、2段階目が事業分析・業務改善などを行うフェーズ。そして、3段階目が市場の将来予測を行い、事業革新や事業創造につなげるフェーズです。ステップが上がるほど、自社のデータだけではなく、さまざまな外部データとの掛け合わせが必要になり、データ活用の難易度も高くなります。

現状、2段階目までは多くの企業で行われていますが、3段階目の「データドリブンで新しい価値を生み出す」というフェーズで大きな成功を遂げている企業はまだ多くないと感じています。

データ活用の3段階イメージ

―確かに。商品開発やマーケティングといった分野でのデータ活用はいかがですか

中山さん:広告・販促の分野ではデジタルマーケティングの技術やツールがすでに多く登場し、活用されています。しかし、一方で生活者インサイトを発見し、世の中の人たちが求めている商品・サービスを生み出して新しい市場を開拓していく分野においては、まだアナログな手法やマーケターの経験やセンスに依存している部分が多くあります。逆に言えば、この部分をいかに強化できるかが、ビジネスの成否を分ける要因の1つになると考えています。そこで私たちは、生活者の声であるSNSのデータ活用によって、生活者インサイトを見つけ出す技術を開発しました。

「トレンド商品が売れている背景を知りたい」というニーズに応えたかった

―「SNSデータから生活者インサイトを見つけ出す」この技術を開発された経緯を教えてください。

中山さん: 昨今、テクノロジーの進化に合わせてデータ利活用やDXがキーワードとなる中で、デジタルやIT活用の戦略・構想立案から一気通貫で携わるプロジェクトが増えてきています。
NTTデータに対して、エンタープライズ向けの業務システム開発のイメージを強く持つ方もいらっしゃるかもしれませんが、もともと当社には数多くのデータ利活用に関するプロフェッショナルが在籍しており、企業の社内データ、顧客の購買データ、POSデータをはじめ、データの管理・分析を得意分野の1つとしてきました。

そして、データ利活用の領域で当社にとって大きな転機となったのが、2012年9月に米Twitter社(現X社)と締結した、Firehose契約です。
Firehose契約とは、日本で唯一X(旧Twitter。以下X)の全量データ(過去データ含む)をさまざまな用途に活用・提供できる権利を得るものでした。これ以降、Xのデータをもとに、さまざまなSNSデータ分析の実績・ノウハウを積み上げてきており、お客さまからも評価をいただいています。

Twitter社(現X)との提携に関して詳細はこちらをご覧ください。

―なるほど。かなり以前から、NTTデータはマーケティング分野におけるデータ活用のケイパビリティを持っていたということですね。

中山さん:そのとおりです。従来からデータ分析に関する個々の案件を多く手掛けてきましたが、企業が持つ売上データやPOSデータを活用して定量的な分析はできる一方、生活者は商品・サービスのどこに魅力を感じているのか、どのような人がどういったシーンで使っているのか、生活者にベネフィットが届いているのかが分からないという課題があったのです。
この課題に対して私たちは、生活者が気軽に自分の身の回りの出来事や、その時の気持ちをポジティブな面もネガティブな面も投稿してくれるXのデータに着目をしていました。そしてSNSが普及するにつれて、お客さまからも「自社データの分析だけでは生活者ニーズをひも解くことが難しい。SNSのデータ分析を掛け合わせることで、顧客の解像度を上げられないか」という相談を受ける機会が増えてきました。
こうして、商品開発やマーケティングへのSNSデータ活用、データ分析を進めてきた背景があります。

―企業データ分析とSNSデータ分析を掛け合わせる中で、新たな発見はありましたでしょうか。

中山さん:多くの企業が「新しいビジネスの種を見つけるために、世の中で流行っているモノ・コトがなぜ流行っているのかの背景・理由を知りたい」「その流行は一過性のものなのか、この先も続くのか知りたい」というニーズが大きいことに気づきました。
また、自社のビジネス領域を他分野に拡大しようとする際、「新しい分野における情報収集の方法が分からない」という相談も多数受けました。このような個々のプロジェクトで培ってきたデータ分析の実績・ノウハウをもとに、多くの企業が共通に持つ悩みである「トレンドの背景・理由を見つけ出す」ことと、「トレンドがどのくらい続くか」をSNSデータから導き出すしくみを開発することにしました。

Xのデータに自然言語処理、生成AIなど先進技術を組み合わせる

―技術開発はどのように進めたのですか。

中山さん:これまでのプロジェクトの実績をベースとしつつ、改めて消費財メーカー、小売企業を中心に数十社の方々にヒアリングをさせていただきました。各企業が感じている課題を分析し、どうすれば解決できるかの仮説を立てて、お客さまと会話して、ブラッシュアップしてという過程を半年ほど繰り返し、どのようなデータを、どのように分析をすれば、お客さまの課題解決につながるか見極めていきました。

一口に“トレンド”と言っても、業界や製品の種類によってさまざまな特徴があり、SNSデータのどういった点に着目して分析をするかは、大きく異なります。
技術開発にあたっては、業界ごと、企業ごと、製品ごとの違いにきちんと対応できるよう心がけています。また、トレンドの”モノ”だけでなく、”〇〇活”など生活者の行動の変容もトレンドとして抽出できるようにしています。

これらは、いかに実際の業務プロセスにデータ活用を取り入れ、役立てるかが重要だからです。DXの取り組みでしばしばありがちな「ソリューションを導入したけれど、現場ではあまり浸透しなかった」というケースは避けなくてはいけません。モノづくりや売り場づくりに関わる皆さんに価値を感じていただくことを念頭に開発を進めました。

―近年では生成AIのビジネス活用も大きな話題となっていますが、技術開発に対する影響はありましたか。

中山さん:生成AIについては、私たちも注目しています。今回の技術については生成AIが主流になる以前から開発してきましたが、日々進化する生成AI技術も取り入れながら随時アップデートを行っています。以前から、NTTデータは自然言語処理、特に日本語の解析技術を研究しており、幅広い分野で実績を重ねてきました。先ほどお話したXの全量データを用いた分析も、これらの技術がベースとなっています。
これまでの私たちの持つ技術に、生成AIを組み合わせることによって、実現できることが大きく広がると考えており、実際に活用を進めています。

私たちが開発した技術は、まだ完成形だとは思っていません。多様化する生活者ニーズやテクノロジーの進化に合わせて日々アップデートしながら、お客さまに新たな価値を提供しつづけていきたいと考えています。

戦略・構想立案から、商品企画、サプライチェーンの変革までを一気通貫で

―マーケティングDXの視点で、今後どのような取り組みをしていきたいですか。

中山さん:今回開発した技術について、実際にトライアルとして、クライアント企業とトレンドを分析・活用し、これを軸とした新商品の開発や、既存商品のリニューアルしていただきました。その中で売上の大幅アップ、売上目標達成といった成果にもつながっています。“現場の皆さんに役に立つ技術を”と考え技術開発を進めた結果、お客さまから“一緒に商品開発をするパートナー”として認めていただいたと感じ、心からうれしく、そして大きな達成感を感じました。

今後国内では、人口減少による人材不足は不可避です。このような中で、私たちの技術によってデータ分析や生活者インサイトの発掘といった時間がかかる部分をデジタル化することは極めて重要だと考えています。お客さまは、その分析結果を用いれば、より戦略立案やアイデア創出に注力していただくことができます。これからも、お客さまとビジネスを共に進めていくパートナーとして価値提供を続けていきたいと思っています。

―最後により広い視点で、NTTデータがお客様にどのような価値を届け、どのようなインパクトをもたらそうとしているのか、展望をお聞かせください。

中山さん:今回開発したSNSトレンド分析の技術は、単体でも効果が見込める一方、企業のサプライチェーンやバリューチェーンに関わる多様なシステムのデータと連携することで、さらなる価値を生み出せるソリューションです。例えば、トレンドの移り変わりや、今後どのようなものの需要が伸びるかをあらかじめ予測をすることができれば、新規商品開発はもちろん、既存商品に関する調達、生産、販売といったさまざまな領域に対して、最適化した企業経営を行うことができます。

NTTデータは、基幹系、業務系のシステム開発においても、圧倒的な実績を有していますので、企業の基幹システムとの連携は、お客さまに対しより大きな価値の提供につながると考えています。デジタル変革のパートナーとして、例えばメーカー企業であれば、戦略・構想立案から需要予測、新商品企画、広告・販促、バリューチェーンの変革、アフターサービスまでを一気通貫でサポートするようなしくみを提供していきたいと考えています。

クライアント企業の業務プロセス全体をデータ分析しながら、PDCAサイクルを回していき、新しい市場の開拓や新たな価値創出をお客さまと共に行っていくことが、今後私たちのめざすビジョンです。

ご紹介した技術を活用した具体的な取り組みについては、こちらの記事もどうぞ。

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