チームワーク

【連載】”再現性のある”新規事業の作り方!プロダクトマネージャー育成と事業プロセス改革(1/3)

NTTデータがアーテリジェンス社の協力を受けて実施したプロダクトマネージャー育成プログラムと、それを起点とした事業プロセス改革によって本気で新規事業を創出しようとするドラスティックな取り組みを、全3回にわたって特集します。第1回は近年のプロダクトマネージャーへの期待と新規事業に対する企業のモチベーションの変化について伺いました。

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近年需要の高まるプロダクトマネージャーとは

近年、プロダクトマネージャーという職種に注目が集まっています。プロダクトマネージャーは、企業が提供するプロダクト(製品やサービス)について、そのビジョンを明確にし、成功に向けて目標を設定しチームを先導する役割を担います。 

プロダクトマネージャーには、「ビジネス」「デザイン」「テクノロジー」のスキルと、それらを俯瞰する高いバランス感覚が求められます。加えて、設定したビジョンや目標を明確に提示し、主体的にチームや関係部署との調整役や先導役を担うソフトスキルも高い水準で要求されます。そのため、近年需要が高まりつつある人材でありながら、育成に苦心する企業も多いようです。

 

プロダクトマネージャーに求められるハードスキル
プロダクトマネージャーに求められるハードスキル(NTTデータ作成)

プロダクトマネージャーについて、その役割や求められるスキルセット、従来のプロジェクトマネージャーとの違いなど、より詳しい解説は下記の記事をご覧ください。 

テキストは⾃動で⽣成されます

テキストは⾃動で⽣成されます

テキストは⾃動で⽣成されます

私たちNTTデータSDDX事業部でも、このプロダクトマネージャー(NTTデータではビジネスディベロッパーと呼称しています)の育成に力を入れて取り組んでいます。2020年度は株式会社アーテリジェンスの協力の下、「デジタルトランスフォーメーション&プロダクトマネジメント研修」と「プロダクトグロース研修」という2つのプログラムを開催しました。社内にスタートアップ的なスキル・マインドを埋め込んでいくという挑戦的な今回の取り組みを通して、お互いに共鳴することや新たな気づきを得ることも多かったようです。

今回は、さまざまな企業のDX人材やプロダクトマネージャー人材育成を主導してきたアーテリジェンス社の山口さんをゲストに迎え、SDDXの人材育成を主導する小木曽さん、組織定着の取り組みを推進する田邉さんとの対談を通して、新規事業を次々に創出し成功につなげていくための人材育成と組織文化への定着、そして事業運営プロセス変革の取り組みについて語りました。 

インタビュイーの紹介

 プロフィール

山口 智史
株式会社アーテリジェンス代表取締役。慶應義塾大学卒業後、総合商社に入社、当時の情報産業本部に配属、IT領域における国内外の事業投資、新規事業立上、海外展開、物流商内拡大を担当。ハーバード大学経営大学院に留学し、MBAに加え、コンピュータサイエンスコース(CS50)など修了。帰国後、教育関連事業投資に関わり、テックベンチャーへの出向、新規事業創出におけるプロダクトマネジメント業務並びに経営企画業務を経て20201月にアーテリジェンス創業。

小木曽 信吾
株式会社NTTデータ ITサービス・ペイメント事業本部 SDDX事業部 マーケティングデザイン統括部 デジタルマーケティング担当 課長
NTTデータ入社後、基盤エンジニアとしてECサイトなどフロント系システムの構築・運用に従事。その後コンサルタントとして、流通、サービス、製造、テレコムなどの業種を対象に、主にテクノロジーを活用した新規サービス創出コンサルティングに10年ほど従事した後、現職へ。現在は流通・サービス業のお客さま企業のマーケティング領域のデジタル変革や新規サービス創出支援に取り組むと共に、ビジネスデザインスプリント開発などのサービスデザイン人材育成や、デジマイズム編集長として自組織のマーケティング強化にも取り組み中。

田邉 裕喜
株式会社NTTデータ ITサービス・ペイメント事業本部 SDDX事業部 サービスデザイン統括部 デジタルエクスペリエンス担当 事業開発マネージャー
コンサルタントとして、小売・流通、製造、ユーティリティなどの業種を対象に、デジタル技術を活用した新規サービス創出や共創ラボ運営などのプロジェクトに従事。その後、スペインに拠点を置くコンサルファームeveris社に1年半ほど出向して欧州企業のDXプロジェクトに参画。帰国後、現職へ。現在は流通・サービス業のお客さまに向けたDXソリューションの企画やコンサルティングを通じて、お客さま企業のデジタル変革や新規サービス創出支援に取り組んでいる。

日本企業におけるプロダクトマネジメントの捉え方

― 近年プロダクトマネジメントへの世間の注目度が高まっているように感じますね。

山口さん:日本では2010年代からデザイン思考やリーンスタートアップという考えが広まってきましたが、最近ではプロダクトマネージャーやグロースマネージャーという言葉が増えてきました。

こうした領域は従来から米国でも注目されてきています。私が2015年から2017年にかけてMBA取得のため米国に留学していた際、周囲で就職活動を行う学生たちが名だたる大手外資系金融や戦略コンサルティングファームの内定よりも、大手IT企業や急成長するテックベンチャーのプロダクトマネージャーやグロースマネージャーに内定したことを喜んでいたのが強く印象に残っています。日本でもプロダクトマネージャーにスポットが当たることは、世界の大きなトレンドにキャッチアップしていて良いことだと感じています。 

小木曽さん:社内でもプロダクトマネージャーをめざす人は徐々に増えていると感じます。当初はデザイン思考やUI/UXのみが普及していた印象でしたが、近年それをプロダクトに落とし込み、きちんとビジネスにしていこうとの流れが生まれてきたと感じます。その結果、NTTデータのような大企業でも、プロダクトマネジメントを重要視するようになってきたと感じます。

山口さん:デザイン思考はMBAにも導入されるほど有用なツールと認識されていました。しかし、それを用いて作ったコンセプトやアイデアをどのようにプロトタイプに落とし込み、市場にリリースして事業やプロダクトを成長させていくのか、あるいは適切なゴール指標の下でどのように仮説検証を重ねて運用しスケールすればよいのか、と言った方法論が十分に普及していない状況でした。そういった事業やプロダクトのステージまで幅広くカバーするのがプロダクトマネジメントやグロースマネジメントという視点だと思います。

リーンスタートアップが提唱するプロダクトのステージ
リーンスタートアップが提唱するプロダクトのステージ(NTTデータ作成)

小木曽さん:デザイン思考はNTTデータでもいち早く着目して取り組みを進めていたのですが、そこからビジネスにするというところに苦戦していました。近年NTTデータでもそこに本格的に取り組み始めたと同時に、DXの盛り上がりという時流も相まって、新規事業創出により積極的になってきたように思います。

田邉さん:プロダクトマネジメントがトレンドとなった背景は日本と北米では異なると感じています。北米はスタートアップやメガベンチャー、GAFAといった始めからデジタルを生業にする人がビジネスを作り、ベンチャーキャピタルが投資するという流れがスタンダードです。一方で、日本はスタートアップが比較的少なく人材の流動性も低いため、大企業にリソースが集中しています。その背景から、大企業が自らビジネスを立ち上げるという流れが生まれていったように思います。

山口さん:おっしゃる通り、前提とする市場環境は大きく異なっているように思います。日本では、既存事業をどのようにデジタル化して効率化するか、といった意味でのDXを進めていくかという議論が多くなされている印象です。ソフトウェアを主軸としたビジネスを展開する企業(注1)と、非ITをこれまで主軸としてきた企業は、ITの活用に対する事業のステージが異なります。そのため、既存事業をデジタル化しようとしているところに、北米・シリコンバレーの成功事例をそのまま持ち込もうとしても、どうしてもフィットしない部分が出てきてしまいます。 

大企業だからこそ、資金的なリスクを負って取り組めることもありますし、そこに北米的なプロダクトマネジメントの考え方を部分的に取り入れることはできると思います。ただ、日本企業でプロダクトマネジメントを行っていくためには、従来の組織のあり方から考え直すことも含めて、何かしらのカスタマイズを加える必要はあると思います。

注1)「ソフトウェアを主軸とする企業」…SaaS(Software as a Service)と呼ばれるクラウド型のソフトウェアサービス型やフェイスブックに代表されるプラットフォーム型と呼ばれる企業が代表的だが、実際にはテスラ(自動運転技術)やウォルマート(配送・マーケティングなどのAI・ソフトウェア技術)、ドミノピザ(AIスピーカーやメッセンジャーなどからの注文機能)など、一見ソフトウェア企業には見えなくても、付加価値の源泉がソフトウェアを主軸としている場合も少なくない。ここではそれらの企業もソフトウェアを主軸とした企業に含まれるものとする。

多くの企業が悩むDX。カギは全体調和の打破

― DXやプロダクトマネジメントについて、アーテリジェンス社にはどんな相談が寄せられますか。

山口さん:今の組織体制や事業の延長線上で、残念ながら「小手先」でイノベーションを短期間で生み出したいという相談が多くあります。しかしながら本来、DXはITツールや方法論の導入だけでなく、デジタルを付加価値の源泉として経営方針や組織体制を抜本的に見直すことです。また、ビジョンに基づいたより長期的な視点で事業に取り組むマインドセットまで幅広く含まれます。このため、従来の延長線上でカスタマイズするだけでは限界がある点は悩ましいです。

小木曽さん:NTTデータでも試行錯誤を繰り返しています。DXの一環で新規事業開発を行おうとしても、多くの社員はどこから手を付けたらいいのかわからないという状態でした。また、組織や経営スタイルを変えていく必要があるとはいえ、一気に切り替えた先にどれほど未来があるかは不透明で、まだ迷いがあるのが現状です。

山口さん:日本におけるDXは、誰が旗揚げをするのかがポイントと思います。ウォルマートやディズニーなど、北米では経営トップがDXを先導しますが、日本では現場からボトムアップで取り組むケースが出てきても良いのではないかと思います。どこが主導するべきかという議論に正解はありませんが、曖昧さや全体調和をどう打ち砕いていくかが肝であると考えます。ただし、仮にボトムアップからの取り組みだとしても、最終的には経営戦略や人材活用を含めた、トップマネジメントを含む組織全体の取り組みへと広げていくことが不可欠だと考えています。

共通言語によって再現性のある新規事業の作り方を身に着ける

新規事業に取り組むにあたり、必要になるスキルセットやマインドセットは何でしょうか。

山口さん:アーテリジェンス社では、「人々に価値の高い情報を体系化し、快適な形で提供する」ことをビジョンに、次世代の新規事業に必要な「ビジネス」「デザイン」「テクノロジー」に関わるスキルセットとマインドセットの習得を、主に研修事業を通じて支援しています。 

アーテリジェンスの取り組み
アーテリジェンスの取り組み(アーテリジェンス作成)

山口さん:前述の「デジタルトランスフォーメーション&プロダクトマジメント研修」以外にも、アーテリジェンス社では新規事業を立ち上げ、成功させていくうえでの共通言語を広げていくための研修も行っています。この領域には最先端のスタートアップや関連する研究も数多くありますので、それら先人の知恵を活かし底上げをしていくことで、イノベーションや新規事業の成功確率をあげることができると考えています。 

共通言語に関するスライド例
共通言語に関するスライド例(アーテリジェンス作成)

小木曽さん:今回の研修で越えたかったハードルはまさにそれでした。「DXやプロダクトマネジメントの進め方がわからない」とは、言い換えれば「どんな言葉を使えばよいのかがわからない」という状態です。NTTデータは新しいことに進んで取り組む風土はあるのですが、それらがさまざまな部門で同時多発的に行われることで、過去にはどの部門も同じような失敗でつまずくこともありました。そうした経験から、個人ではなく組織として共通言語を持って進んでいくことが大事だと考えていました。

田邉さん:今回のプログラムは、北米である程度裏打ちされた知識が詰まっていたように感じました。今までは、自己流でビジネスを作る人が多かったように思いますが、最近は徐々に方法論が確立されてきたように思います。そうした知識が共通言語化されていることが、新規事業を行ううえでのスタートラインとして重要だと感じました。

山口さん:新規事業に関する研修として、成功者が自らの体験談を語るようなものは多くあります。確かに成功者の経験則的なアプローチも有効な方法の一つですが、その体験を受講者に当てはめた場合に、再現性があるかどうかは疑問が残ると思っています。アーテリジェンス社では成功確率が高く万人に共通するメソッドを教えること、そしてそれを実際の体験者に語ってもらうこと、いう双方のバランスを非常に意識しています。

小木曽さん:イノベーションの創出が「科学の時代」になった感じがしています。これまでは、突然変異的に表れた「天然もの」の社員がすごいビジネスをやるということはあったと思うのですが、これを科学的に再現性がある状態にするのが世の中の流れになっていると感じますね。

  

次回は、「プロダクトグロース研修」に焦点をあて、カリキュラムのねらいや研修を行ってみての新たな気づき、そして受講者に見えてきた変化について深く掘り下げていきたいと思います。 

【まとめ】

  • 近年はデザイン思考だけでなく、それを用いて新たな事業・プロダクトの開発や成長に取り組む企業が増えてきている
  • その結果、大企業においても新規事業創造の手法としてプロダクトマネジメントへの注目が高まってきている
  • 近年の新規事業開発では、シリコンバレーで実証されたスタートアップの手法を体系化し、共通言語化するアプローチを推進している
  • 属人的なアプローチではなく、実証された再現性のある手法を学ぶことで、イノベーションの成功確率を高めることができる
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