サービス&チャレンジ

その課題、合ってますか?事例から見るデジタルマーケティング施策の課題特定のコツ

新型コロナウイルスの影響もあって、ECサイトの立ち上げやWEB広告などのデジタル接点を活用したマーケティング施策に比重をかける企業が増えてきています。本記事では、ネットイヤーグループが過去にご支援した事例を通して、効果的なデジタルマーケティング施策を立案・推進するためのポイントをご紹介します。

デジタルマーケティング渡邉 博(ワタナベ ヒロシ)
ネットイヤーグループ株式会社 パフォーマンスオプティマイゼーションチーム プロデューサー
2019年、ネットイヤーグループに新卒入社。大手オートバイ買取企業のシステム構築プロジェクトのディレクションを担当。2020年度より、ダイレクトマーケティングにおけるサイトへの集客やパフォーマンス向上に直結するコンサルティング業務に従事。とりわけ集客分野であるSEO支援を得意とする。

施策の「目的」と「手段」が逆転することによるリスク

新型コロナウイルスの影響によってマーケティング活動のデジタル化が急速に進む中、当社(ネットイヤーグループ)にも多くの相談やお問い合わせを頂いております。ただ、施策の「目的」と「手段」が逆転してしまい、本来は手段である「施策を打つこと」自体が目的になってしまっている企業さまも多いと感じます。

この問題の背景の一つに、“自社の課題を具体的に捉えられていない”ことが挙げられます。課題特定・要因分析を十分行わない状態で施策立案を行っても、的を射た施策にならず、また、施策それぞれの優先順位もあいまいなままになってしまいます。

ただ、こうした問題は頭ではわかっているものの、なかなかどうすれば良いかわからないもの。そこで今回は、当社でご支援した過去の事例を交えながら、課題特定・要因分析を行うにあたって、どこに気をつければいいかをお伝えします。

ケース①:「競合他社が実施している施策をやってみたい」

デジタルマーケティング生命保険会社A社さまは、Webサイトのコンバージョン数(資料請求数)減少に悩んでいました。その改善をねらいに、「競合他社が出稿している某SNS広告を実施したい」と当社にご相談をいただきました。ただ、A社さまに詳細をヒアリングしたところ、なぜ某SNS広告が重要な施策なのか、考えが深まっていないように感じました。

「競合他社が実施している施策をやってみたい」は、冒頭でお話しした「手段の目的化」のひとつの具体例です。コンバージョン(CV)数減少の要因分析には、まずCVを構成する変数である「Click(流入数)」と「CVR(注1)」に着目することが重要です。

この事例では、どちらの変数が“CV数減少”のボトルネックとなっているのか調査した結果、CVRであると特定できました。A社さまのCVRは、同業界の平均CVRの半分以下となっていたためです。

また、CVRが低い要因も、商品力や、ターゲティング、ランディングページなどいくつかの変数によって構成されますが、A社さまのボトルネックはランディングページでした。

デジタルマーケティング
CV最大化においてみるべき変数ツリー(例)

A社さまランディングページを分析したところ、資料請求までの導線(CTA(注2))が分かりづらいことや、盛り込むべきコンテンツの不足、コンテンツがあったとしても内容が充実していないなど、他社と比較して多くの改善ポイントが見つかりました。つまり、上の図で言えば、”集客”によって流入数を増やすのではなく、”接客”を充実させることが先決と考えました。

上記を踏まえた当社ご提案の結果、A社さまはランディングページの改善に取り組むこととなり、某SNS広告をせずとも、短期的にコンバージョン数を増加させることができました。

注1)Conversion Rate(コンバージョンレート)の略称。WEBサイトにアクセスが発生した場合、そのアクセスのうちどのくらいが、登録や購入、申し込みなどのコンバージョンに繋がったかの割合を示す。

注2)Call To Action(コールトゥアクション)の略称。WEBサイトにおいて、訪問者に取ってもらいたい行動に誘導することをさし、例えば資料請求をしてもらうことが目的であれば、「今すぐ資料請求する」といったボタンやバナーなどを活用して、資料請求ページに誘導することがCTAとなる。

ケース②:「以前成功した施策は、今も有効のはず」

デジタルマーケティング消費財の小売メーカーB社さまは、数年前にWEBマーケティングの基盤として、自社サイトの改修を行いました。導線やデザイン・トーンの変更、情報を伝えるコンテンツの整備を行ったことによって、使い勝手や視認性、分かりやすさが向上し、CVRも改善されました。しかし、改修後に右肩上がりで推移していたCVRが徐々に下がりはじめたことから、打開策として更なるサイト改修やUI変更を考えていました。

「以前成功した施策を今一度実施することが成功に繋がる」というのは、一見合理的なように見えます。しかし、市場や競合の状況は常に変化しているため、それらの最新状況を調査せずにその施策が有効と判断してしまうのは、”手段の目的化”の具体例のひとつです。

B社さまの場合も、まず疑うべき変数は沢山あります。例えば「流入ユーザーの質がどう変化したか」や「市場や競合の動きが変わったか」などです。当社にて要因を分析したところ、CVRが下がり始めた時期とアッパーファネル(認知段階のユーザー)向けの広告配信比率を増やした時期が重なりました

アッパーファネルへの認知を高めると、そのぶん関心の低いユーザーも増えるため、結果CVRは下がる傾向にあります。B社さまの場合、広告配信比率の増加はねらったものではなかったため、広告の配信比率調整、ターゲティング・プレースメント(注3)の精査によって、CVRをV字回復することができました。

もちろん、「更なるサイト改修」でもCVRを向上させられる可能性はありました。ただ、今回はCVR低下に繋がるより大きな要因を特定できたことと、その打ち手が非常に低コストだったことから、費用対効果の大きい良い施策となりました。

注3)プレースメントターゲットとは、広告を出したい任意のウェブページや動画、アプリを指定して配信できる手法。

ケース③:「パートナー企業から提案されたから」

デジタルマーケティングWEB通販を営むC社さまでは、減少傾向にあったWEB広告経由での売上改善に向け、WEB広告予算を増額し、出稿量を増やすことでコンバージョン増加(=売上増加)に取り組んでいました。しかし、対策前と比べClick数・コンバージョン数の改善傾向が見られなかったことから、パートナー企業に相談したところ、「今の媒体では配信し尽くしたので、新たな媒体へ配信しましょう」と提案を受け、検討していました。

この場合、課題の要因は本当に媒体面の”枯れ”(=配信し尽くしたこと)でしょうか。

広告効果が下がる要因はさまざまあります。「媒体面の枯れ」もそのひとつですが、「クリエイティブの枯れ(=広告がユーザーに飽きられた)」「適切でないターゲット・プレースメントに配信されていた」「市場のトレンドや、競合の出稿状況が変わった」などは真っ先に疑うべきポイントです。

上記のような観点での調査の結果、当社からは「新規クリエイティブの入稿・配信」を提案させていただきました。広告管理画面やレポートを拝見したところ、長い期間クリエイティブを変更しておらず、CTR(注4)が低下し、CPC(注5)が高騰していたためです。つまり、「枯れたのは媒体面ではなく、クリエイティブ」という仮説です。

結果として、新規クリエイティブの配信によって、CTR・CPCを回復させることができ、コンバージョン数も純増することができました。

蓋を開けて見れば、何てことないオチのように感じるかもしれません。ただ、自社のことを良く知っているパートナー企業の提案であっても、まずは一度立ち止まって課題と思われる要因をしっかり洗い出し、何がボトルネックなのか仮説を立て、対策を練ることが重要です。

注4)Click Through Rateの略称。ユーザーに表示された回数(インプレッション数)のうち、ユーザーがクリックした回数の割合。

注5)Cost Per Clickの略称。日本語では「クリック単価」と訳され、広告を1回クリックした際に発生する費用指標。

課題特定・要因分析を行うにあたって

デジタルマーケティング

今回ご紹介したケースのように、目的と手段の逆転は日々の仕事の中に潜んでいます。

「競合他社が実施している施策をやってみたい」、「パートナー企業から提案されたから(やってみたい)」と言ったケースは、社内で説明しやすい合理的な印象を受けますが、その施策が課題解決に繋がっていない可能性を想像してみることが大事と考えます。

また、課題特定・要因分析にあたって大切なのは、表向きに見えている数値の奥に潜む、課題を引き起こしていそうな変数を洗い出すことです。その上で過去と現在の数値を比較したり、業界の平均数値と比較したりすることで、ボトルネックを発見します。

一般的にこうしたWEBマーケティングの課題解決にあたっては、広告領域は広告代理店さまへ、UI領域はサイト制作会社さまへ、といったように個別にご依頼されていることが多いと思います。一方、当社の場合は”集客”施策であるWEB広告・SEO・SNS・CRMから、”接客”施策のUI/UX改善・EFO(入力フォーム最適化)まで、領域横断でのご対応が可能です。領域ごとの成果マネジメントではなく、サイト全体の成果マネジメントに貢献することができると考えています。

なお、WEB広告・SEO・UI/UX改善の3領域に関しては、毎月5社限定で無料簡易初期診断を行っています(2021年6月現在)。無料ですが、これまで診断を受けたお客さま企業からは「お金を払う価値がある」と評価をいただいています。今回読んでいただいたみなさまの課題特定にもこの無料診断を活用いただけると思いますので、興味があれば下記よりお気軽にお問い合わせください。

面白かったら「いいね!」お願いします!
WHAT’S NEW

新着記事を探す

KEYWORD

キーワードから記事を探す

PICK UP LINKS

関連するサイトを見る