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自社スマホアプリの処方箋-お客さま体験を第一に考える”Oneアプリ・Oneメッセージ”の方法論

小売・流通業界のみならず、メーカー系企業でも進む自社スマホアプリ導入。一方、導入したものの今一つ成果が出ていないとお悩みの方々も多いはず。この記事ではその理由と、処方箋となる「Oneアプリ・Oneメッセージ」について解説したいと思います。

加藤 弘和
2007年ネットイヤーグループ入社。ナショナルクライアントのデジタルマーケティング戦略立案から個別施策の企画立案業務に携わる。2020年7月より、デジタル&フィジカルデザインチームを立ち上げ、DigitalとPhysicalを融合させる(繋ぎこむ)ことでデジタルの未来を作るサービス支援を始動。

ますます重要度が増すスマホアプリ。でもその多くはなぜ”つまらない”?

企業とお客さまを繋ぐコミュニケーションツールとして、スマホアプリが注目されてから随分と経ちました。さらにコロナ禍において対面接客などが大きく制限されるようになってしまったことから、非接触なデジタルサービス提供としてのニーズがますます高まったと、肌で感じています。

一方、せっかく立ち上げた自社スマホアプリに対し、お客さまから厳しい意見をもらう、という話もしばしば聞きます。それなりに高額なコストとリソースを注ぎ込みリリースしたアプリが、届けようとしているお客さまに気に入ってもらえないのは辛いものです。なぜそのようなことが起こってしまうのでしょうか?

アプリストアのレビューを眺めてみると、以下のような声が多いことに気付きます。

  • 「配布されるクーポンに魅力を感じない」
  • 「通知をオンにすると頻繁に通知が届く。うるさいからオフにした」
  • 「店舗のチラシはスマホ画面だと読みづらい」
  • 「ポイントが貯まると聞いていたのに全然貯まらないし使い道も少ないからすぐ消した」

こういった辛辣なレビューを読むと落ち込んでしまいますが……そこはぐっと堪えて考えてみましょう。ポジティブに捉えれば、こうしたお客さまは少なくとも一度はインストールし、かつ使って下さった方々です。より深刻な問題は、使ってさえくれないお客さまも多いという点です。

ある調査では、一般的なスマホユーザーは、平均で約100個のアプリをインストールし、そのうち月に1回使うアプリが約37個、毎日使うアプリはおおよそ9個と言われています。100個と聞くと一見多い印象ですが、スマホの一画面におおよそ30個のアプリが表示されると考えると、3画面程度となります。そのくらいのアプリは入れているという方も多いのではないでしょうか?

1人当たりのスマホアプリ利用数

別の見方をすれば、100個以上は管理が面倒なので、本当に気に入ったアプリしかインストールしない、とも考えられます。容量の問題などでアプリを整理する際には、最近使ってない、そもそも入れたことさえ忘れていた、あまり印象に残っていない、使う用途や意味を感じられない、と言ったものは真っ先にアンインストールしてしまうものです。

要するに、そのアプリを使用する目的がユーザーにとって明確で、頻繁に使い、他のアプリとは似ていない特徴があるといった要素がないと、お客さまのベスト100アプリには残れないということになります。

下に示した表は、国内小売業の公式アプリをピックアップし、各アプリの主な機能を分類したものです。ご覧いただければ分かる通り、各社のアプリの機能は、実は驚くほど似通っています。どの企業もアプリを通じた販促を主眼に置いているため、どうしても同じような機能になってしまっている様子がうかがえます。しかし、これをお客さま目線で見れば、「どれもこれも同じようなものばかりだな」となっているのではないでしょうか。

公式アプリの主な機能
出典:ネットイヤーグループ調べ(2020)

これからのスマホアプリづくりは「自社特有のお客さまの声に耳を傾ける」こと

前述の機能は、すべて企業目線の「実業の販促」が目的です。しかし、それだけではもはやお客さまがついてこなくなってきたというのが実情ではないでしょうか。今後は、アプリを通じてその企業(ブランド)における新しい体験を提供することが目的となるべきではないかと考えています。そして、その実現のためには、アプリを中心とした「サービスをデザインする」必要があると考えています。

具体的には、同業他社のアプリを参考にするだけでなく、自社の大切なお客さまに目を向けて、何を求めていて、何に困っていて、何に不便を感じているか、といったところから物事を考えることが大事ではないでしょうか。そして、それらニーズや不満をアプリで解決する方法はないだろうか?という考え方からサービスを企画しデザインすることが大切だと思います。

例えば東京ディズニーリゾート(TDR)のアプリは、チケットの手配やチェックイン、各種施設案內やプログラム情報の表示、オンラインショッピングなどの機能が備わっていますが、最も”推している”機能は「各種アトラクション待ち時間のリアルタイムチェック」です。これはTDRのお客さまならではの深刻なペインポイント(不満)である「待ち時間」にフォーカスした結果と言えます。

ディズニーランドアプリ
引用元:GooglePlay

こうした例はTDR特有のものと思われるかも知れません。しかし、どのような施設や店舗でも、「エレベーターがなかなか来ない」、「トイレがいつも混んでいる」、「サービスカウンターにスタッフがいない」と言ったお客さまのペインはあるはずです。そのような声(ペイン)に耳を傾け、サービス改善の仕組みをアプリで提供するだけでも、他社とは差別化されたアプリとなるのではないでしょうか?

シンプルであるための”Oneアプリ・Oneメッセージ”とは?

ここまで申し上げたような、お客さまの気持ちに寄り添った、お客さまを喜ばせる体験を提供するアプリの大切さに加え、もう一つ気をつけておくべき視点、それは「シンプルさ」です。提供する側としては機能を色々と盛り込みたくなりますが、お客さまにとっては「結局何ができるアプリなのかよく分からない」となってしまいます。

お客さまがアプリをダウンロードするきっかけは、主にアプリストアでの検索と知人からの紹介が多数を占めるというデータがあります。そのうち、アプリストアでの検索は、お客さまが求めるキーワードで検索→キーワードに沿ったアプリ紹介ページを見る→自分の求める機能が備わっているかを判断、を経てダウンロードします。

一方、知人からの紹介といったシチュエーションでは、
知人:「○○っていうアプリ知ってる?」
自分:「知らない。どんなアプリなの?」
知人:「○○が出来るアプリだよ。便利だから入れてみたら?」
自分:「へーそうなんだ。入れてみる!」
のようなシンプルな会話からダウンロードにつながることが多いでしょう。

両方に共通していることは、アプリストア内の限られたスペースしかない紹介ページや、知人同士での短い会話の中で、シンプルにそのアプリは何が出来るかが直接的に伝わることが、ダウンロードにつながる上で重要、ということです。

シンプルさを求める上で重要な考え方が”Oneアプリ・Oneメッセージ”です。アプリのコンセプトを考える上で、アプリで出来ることをなるべくひとつの簡単なメッセージで説明できるようにしようという考え方です。

例えば先ほど挙げたTDRのアプリでは、「ディズニーランド/シーの各施設の待ち時間がリアルタイムで見られる」とシンプルに説明できます。その他のアプリの例では、「店舗で待たずにいつでもどこからでも席予約ができる」先駆けとなったスシロー、「お薬手帳の代わりになる」ココカラファイン、「いつでも百貨店専門スタッフと相談しながらお買い物ができる」三越伊勢丹のリモートショッピングが好例と言えるのではないでしょうか。

スマホアプリ
引用元:GooglePlay

もちろんこれらアプリは、その機能"だけ"を実装しているわけではなく、他にもさまざまな機能があります。重要なことは、そのアプリの売りとなる機能が明確で、それがお客さまにとって魅力的であることです。

これらのように”Oneアプリ・Oneメッセージ”で表現出来るアプリをめざすこと、言い換えれば、たくさんの機能を満載して結局何が出来るのか分からないアプリにはしないことが非常に重要ではないかと考えます。

スマホアプリの企画の進め方

最後にこれから自社スマホアプリの提供・強化を考えていらっしゃる方へ向けて、お客さまに愛されるアプリ企画の進め方をご紹介したいと思います。

  1. お客さまが喜ぶ新しいサービスを提供する、というマインドで考え始める
    ここまでお伝えしてきたように、アプリは企業とお客さまを結ぶ大切な接点です。普段営んでいらっしゃるビジネスと同様に、まずお客さまにどうやって喜んでいただくかという気持ちから企画を始めるのが重要です。

  2. 自社のお客さまを観察し、お客さまのニーズや深層心理を理解する
    企業側の視点ではなく、あくまでもお客さまの視点で(それが難しいのですが)、自社のサービスをどのようにご利用いただいているか?そこに不便や不満を感じている部分はないか?どのようにすればお客さまはより満足して頂けるか?といったことを洗い出します。

  3. お客さま体験のどこで自社スマホアプリが効果を発揮するかを特定し、機能に落とす
    お客さまの体験の中で、お客さまのペインを解消できたりニーズに応えられたりするポイントがどこか、かつ最もアプリの特性が活かすことのできる箇所を特定し、具体的な機能に落とし込んでいきます。

  4. ”Oneアプリ・Oneメッセージ”の考え方に基づくアプリコンセプトの明確化
    結局のところ、「このアプリは何が出来るのか?」という問いにシンプルに回答できるところまでアイデアを収れんさせていき、文章にしてみることをおすすめします。その文章にそぐわない機能は思い切って外してしまうことも大事となると思います。

  5. アプリリリース後、お客さま体験の検証を
    アプリリリース後、そのアプリがお客さまにとって新たなサービス体験となり、満足を得られているかを検証しましょう。思惑通りではない場合は当然改善する必要がありますが、思惑通りだったとしてもそこで手を止めることなく、さらなる改善箇所を検討してみてください。新しいサービスを体験したお客さまは「こうなったらもっと良いのに」という新たな想いが生まれているはずです。

スマホアプリの企画からリリースまで一貫してご支援します!

ネットイヤーグループでは今回ご紹介した考え方などを駆使し、さまざまなお客さま企業の自社スマホアプリをご支援しています。お客さま目線のアプリ企画はもちろんのこと、アプリをより安価・短期間でリリースできるSaaS型のアプリ開発サービスを開始しましたので、ぜひお声がけください。また、リリース後の集客戦術、アプリ利用動向に基づくCRM活動のご支援など、幅広いサービスを提供しております。お気軽にご相談ください。

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