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もう止めたい、”絵に描いた餅”のカスタマージャーニー InnovationConference2020登壇レポート②

登壇レポ―ト①に引き続き、「NTT DATA Innovation Conference 2020」の登壇レポートをお届けします!今回はネットイヤーグループ株式会社 執行役員 デジタルビジネスデザイン事業部長 佐々木 裕彦氏の講演内容のご紹介です。ネットイヤーグループは2019年春にNTTデータのグループ企業となり、私たちSDDX事業部とはさまざまな取組を共に進めています。デジタルマーケティング業界を牽引してきたネットイヤーグループだからこそわかる、「理想の顧客体験を実現するために大切な、カスタマージャーニーとの正しい向き合い方」について語っていただきました。ぜひご一読ください!

改めて考える、なぜ今顧客体験が重要なのか

顧客体験を設計する上で、とても大切なカスタマージャーニー。作成を試みた経験のあるマーケターの方も多いのではないでしょうか。

ところが実際にやってみると、「一度Webサイトにアクセスしたら、その場ですぐに個人情報を入力して、資料をダウンロードする」といった夢物語に終始してしまうケースが後を絶ちません。

「カスタマージャーニーのワークショップを行うと、『お客さま目線でやりましょう』と口では言いつつも、知らず知らずのうちに自社の都合を押し付けてしまいがち。お客さまはそんなに都合よく動きません」と佐々木氏は苦言を呈します。

そもそも、なぜ顧客体験が重要なのでしょうか。その理由について、佐々木氏は次の3つの時代の変化を挙げました。

1. 企業のメッセージが届かない

私たちも日頃から肌で感じているように、スマートフォンの普及によって、世の中に流れる情報量が爆発的に増加しているからです。10年以上前の「情報流通センサス報告書(総務省平成18年度)」では既に、「世の中に流れている情報のうち、実際に消費されている情報は、わずか1%に満たない」という状況が報告されています。

「もはや『企業が発信している情報は、お客さまのところには届いていない』という前提で仕事をしなければならないし、わずか1%未満の“お客さまと接触できる情報”になるために、『お客さまがいる場所』をうまく活用していく必要があります」

2. 体験を重視するコト消費へ

よく言われている“モノ消費からコト消費へ”という話です。かつては「安い・速い・カッコイイ」といったモノの機能的な価値や所有する価値によって、お客さまは消費行動を行なっていました。しかし今のお客さまは「課題が解決されて満足・気づかされて嬉しい・便利で心地よい・貢献できて嬉しい」といった体験の価値を求めるようにシフトしています。

3. もっと自由な購買体験へ

以前は「店頭で売っている商品」と「ECで売っている商品」が異なっていたとしても、それが当たり前だから仕方がない、とお客さまから受け入れられていました。しかし、今はスマートフォンを片手にいつでもどこでも購買が可能となり、「今、店頭で目にしている商品をECで買いたい」「ECで買った商品を、店頭で返却したい」など、お客さまからの要求水準はどんどん高まっています。

3つの時代の変化の説明図
3つの時代の変化の説明

「企業は、このような時代の変化を捉え、今のお客さまに徹底的に寄り添い、お客さまのことを深く理解し、お客さまの都合に合わせてビジネスを組み立てる『カスタマーエクスペリエンス経営』が求められています」と佐々木氏は説きます。

日本企業に求められるのは“制限付き”ではない本当の顧客志向

では、実際にカスタマーエクスペリエンス経営を実現するためには、どうしたらいいのでしょうか。

「日本企業でお客さまのことを大切にしていない企業はない」とはいえ、「『“今あるシステムの範囲では”ベストを尽くしている』、『“今、目の前にいるお客さまに対しては”100%の対応をしている』、『“自分の担当業務に関しては”お客さまのことを一生懸命考えている』といった“制限付き”であるところに、日本企業が真の顧客志向に変わっていくチャンスがまだまだ残されている。この現状を一からすべて見直して、本当にお客さまにとって快適な状態を追求しなければいけない時代が来ているのです」

次に、お客さまが世界中どの店舗に行っても同じ体験ができるよう、緻密なカスタマーエクスペリエンスマップを作成しているスターバックスを例に挙げ、「ブランドを守り、拡張させていくためには、日本のようにカスタマーエクスペリエンスの設計をマーケティング部門に丸投げしていてはいけない。経営イシューとして、組織・人事評価・マーケティング・業務・システムを再構築し、お客さまにとって『最適な体験』を提供することを、企業の競争力の源泉にしていくべきである」と語ります。

そのために大切なのは、カスタマーエクスペリエンスデザイナーという専門家の力を借りながら、企業全体でカスタマーエクスペリエンス志向を身につけること。カスタマーエクスペリエンスの本質は、「お客さまのインサイトを探ること」であると言い、目の前の商品・サービスを売ることだけを考えるのではなく、「購買行動データや外部環境などのデータ分析からお客さまの本質的な課題を深掘りすることが重要である」と説きました。

絵に描いた餅で終わらせないカスタマージャーニーの作り方

お客さまのインサイトが見えてきたら、次はカスタマージャーニーの作成ですが、「その前に、みなさんはお客さまとの接点をすべて列挙することはできますか?」と佐々木氏は投げかけます。自分の担当領域だけでなく、すべての接点を洗い出した上で、全体的に俯瞰しながらすべての顧客接点をカスタマージャーニーに落とし込んでいくことが大切です。

佐々木氏講演の様子
ネットイヤーグループ株式会社 執行役員 デジタルビジネスデザイン事業部長 佐々木 裕彦氏

加えて、カスタマージャーニーを作る際に大切なのが、時間軸です。「どこの企業でも『買う瞬間』のコミュニケーションに集中していることが非常に多いが、『買う前』も『買った後』も含めて顧客体験を考えることが重要」だと佐々木氏は強調します。

「カスタマージャーニーというのは『お客さまがブランドや商品との間にある複数の接点を渡り歩く体験』であり、それを図示したものがカスタマージャーニーマップ。タッチポイントを“網羅的に見ること”と“時間軸で見ること”がとても大切です」。

カスタマージャーニーを作成する価値は、お客さまの最適な体験を実現するための道しるべになるだけでなく、『私たちの会社は、誰に向かって、どういう体験を届けたいと思っているのか』という価値観を、全社で共有できる点にあると言います。だからこそ、1つの部門だけで考えるのではなく、できるだけいろいろな部署を巻き込んで、みんなで一緒に考えることに意味があります。

しかし、せっかくカスタマージャーニーマップが完成しても、「結局、何も変化が起きなかった」という企業が少なくないと言います。

会場の様子

その理由について佐々木氏は2つのケースに分け、それぞれの原因を解説しました。

ケース1:せっかく描いたCXを実現できなかった、もしくは成果物が中途半端でCXが良くならなかった

(想定される原因)
・ カスタマーエクスペリエンスを実現するために、既存業務の変更や改善に踏み込まなかったから。今までの業務の範囲で表面的に機能をつけるにとどまっているから。
・ カスタマーエクスペリエンスのデザイン業務と、システム開発業務が分断されており、正しい要件定義ができていなかったから。

ケース2:理想のカスタマーエクスペリエンスを描いたが、企画段階で終わってしまった

(想定される原因)
・ カスタマーエクスペリエンスを実現するために必要な業務とシステムの計画が、企画書に含まれていなかったから。

「カスタマージャーニーマップだけでは、実装するための情報が不足しています。絵に描いた餅で終わらせないためには、業務とシステムの変更点まで書かれている『サービスブループリント(注1)』というアウトプットに進化させなければいけません」。
注1)サービスがユーザーに提供されるプロセスを、ユーザー体験とサービス提供スタッフ・システムの動きと合わせて、時系列で表したダイアグラム

カスタマージャーニーマップの例
カスタマージャーニーマップの例

最後に佐々木氏は、「これまでの経営のままで、表層的にカスタマーエクスペリエンスだけを変えようとしても、結局、何も変わりません。カスタマーエクスペリエンスの成否は、組織・人事評価・マーケティング・業務・システムの変革に踏み込んで、覚悟を持って経営を変えていけるかどうかにかかっているのです」と語り、講演を締めくくりました。

※所属および役職は、登壇時のものとなります。

基本データ

会社名       ネットイヤーグループ株式会社(英文名称: Netyear Group Corporation)
本社所在地     〒104-0061 東京都中央区銀座2-15-2 東急銀座二丁目ビル
ホームページURL  https://www.netyear.net/
代表取締役社長CEO 石黒不二代
設立        1999年7月7日
資本金       5億7,096万円(2019年3月31日現在)

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