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複数事業を営む企業がロイヤリティプログラムを見直す際押さえるべき2つのポイント

お客さまへランクに応じた特別なサービスの提供やポイントを付与することにより、自社商品やサービスに愛着を感じてもらい、LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)を高めるロイヤリティプログラム。複数事業を営むコングロマリッド企業では、このロイヤリティプログラムを見直しの傾向が高まっています。次世代ポイント/顧客管理SaaS「CAFIS Explorer」の企画営業としてロイヤリティプログラムに詳しい本間 弘子さんが、コングロマリッド企業を代表する鉄道業界を例に、近年見直しが増えている理由と見直し時のポイントを語ります。

本間 弘子
株式会社NTTデータ ITサービス・ペイメント事業本部 SDDX事業部 マーケティングデザイン統括部 デジタルマーケティング担当
次世代ポイント/顧客管理SaaS「CAFIS Explorer」の企画営業を担当。鉄道・SC・百貨店業界を主軸にお客さまの中期経営計画やヒアリングなどを基に構想段階から検討支援、顧客接点のビジネスやポイント制度設計など、知見を活かしながら、提言を実施。近年ではメーカー・金融・エネルギー業界でも、DX改革として顧客理解を深めるために、顧客接点・サービスの見直しを検討する動きがあり、新規開拓の活動を推進中。

なぜ今、ロイヤリティプログラムを見直すコングロマリッド企業が増えているのか?

大きくは、「デジタルテクノロジーの進化」と「事業上の背景」の2つの理由です。

デジタルテクノロジーの進化」とは、一言で言えばスマートフォンの普及です。これまでの企業とお客さまとのタッチポイントは、商品の購入やDMの郵送程度でした。これがスマートフォンの普及によって、リアルタイムでの双方向コミュニケーションに進化し、お客さまとの関係性をより深く築けるようになりました。さらに、スマートフォンを通して得たお客さまの行動や属性といった情報を紐づけることで、認知⇒興味関心⇒購入⇒購入後という顧客体験全般において、購入以外のシーンでもタイムリーにきめ細やかなアクションを起こせる環境が整ってきました。この進化が、ロイヤリティプログラムを強化し、顧客エンゲージメント向上に力を入れる企業の増加を後押ししています。

ロイヤリティプログラムを見直す企業が増えている理由

もう一つの「事業上の背景」とは、新型コロナウイルスの影響による企業の業績悪化です。例えば鉄道業界の場合、軸となる交通・運輸事業はテレワークや外出控えのため売上・利益ともに大きく減少しました。その減少分をカバーするために、ショッピングセンター(以下、SC)、食品スーパーマーケット(以下、食品SM)、百貨店といったグループ内の各事業を連携させることで、利用者を互いに送客し合ってより大きな商圏を築こうとしています。こうしたグループ内連携を加速させるため、ロイヤリティプログラムの見直しに取り組む企業が増えています。

複数事業を営む企業がロイヤリティプログラム見直す時の課題とは

最近は大手企業のみなさまから、LTV向上を狙うマーケティング施策として、事業横断型のロイヤリティプログラムに関する相談を受けることが増えてきました。

実際に私が過去に担当させていただいた鉄道業界のお客さま企業は、鉄道に加え、系列のSCや食品SMなどをご利用のお客さまの相互送客を実施し、沿線地域を活性化したいとお考えでした。一方、複数事業・施設の相互送客を目的としたロイヤリティプログラムの導入にあたっては、大きく2つの課題があると考えています。

課題1: 事業・組織ごとに運用されるロイヤリティプログラムや会員管理システム

鉄道業界のように複数の事業を抱える企業グループの場合、事業ごとにロイヤリティプログラムや会員管理システムがあり、それぞれ会員組織を持っているケースが多くあります。

この状態では同じお客さまがそれぞれの会員組織に存在してしまうため、ひとりのお客さまとして行動を正確に把握することができません。本来であればさまざまなシーンにおいてお客さまと一貫性あるコミュニケーションを取りたいところですが、こうした理由から、各事業会社がバラバラにコミュニケーションを取らざるを得ない状況となっています。

こうした状況をどのように解消していくかが、大きな課題のひとつです。

複数事業・複数施設におけるお客さまとのコミュニケーションのあるべき姿

課題2:複数事業・施設をまたがるロイヤリティプログラム制度

複数事業・複数施設におけるロイヤリティプログラムの制度設計や制度の適用もまた、大きな課題のひとつです。

例えば食品SMと百貨店では顧客単価が大きく異なります。お買い上げ商品の10%をポイント還元するとしたら、百貨店で10万円の指輪を購入すると1万円分のポイントが付与されるので、食品SMで1万円分のお買い物ができることになります。果たしてこれは横断施策として正しいのか、ひとつひとつ考えていく必要があります。

当社がご支援させていただいたJR西日本SC開発株式会社さまでは、名称の異なる各SCでは個別のロイヤリティプログラムを運用しながら、グループとして共通の制度も重ねて運用する形を採っています。具体的には、天王寺ミオでは会員ランクアップに年間20万円、ルクア大阪ではゴールド会員へのランクアップに年間50万円のご利用、プラチナ会員へのランクアップに年間100万円のご利用と、SCごとの特性に合わせて基準を変えながら、一方でWESPOポイントという共通ポイントを保有しています。

つまり、ロイヤリティプログラムの目的を定め、共通化すべき点と個々の事業ごとに残すべき点を、グループ全体として設計することが重要です。

ロイヤリティプログラムを刷新するための2つのポイントとは

事業横断でのお客さまとのコミュニケーションの実現、そしてグループ全体での制度適用に向けて、ロイヤリティプログラム見直しのポイントは「顧客データの一元管理によるお客さま理解の深化」と「グループ横断導入実績のあるパートナーの選定」であると考えます。

①顧客データの一元管理によるお客さま理解の深化

事業横断でのお客さまとのコミュニケーションを実現するためには、顧客データの統合、つまり一元管理が重要です。そして、一元管理とあわせてロイヤリティプログラムを共通化する目的、すなわち、ひとりのお客さまをしっかりと理解し、コミュニケーションをとることで良い顧客体験を実現、顧客エンゲージメントを高めることも重要です。顧客データの一元管理によってお客さまの行動をより深く理解できれば、お客さまの視点で必要な情報を必要なタイミングでお伝えすることができ、それがグループ内の相互送客の実現につながります。

例えば、普段は近所の食品SMを利用しているAさんが電車で旅行に出かけるとします。特急の乗車駅ではスマートフォンアプリにお勧めの駅弁情報が通知、旅先の駅に到着すると百貨店から地域限定のお土産が紹介される、そして土地感のない旅先でも迷わないよう土産売り場まで案内してくれる。旅行から帰った一週間後には、沿線の百貨店で開催されている旅先の物産展の情報が届くといった手厚いフォローが可能に。

顧客データの一元管理によって同じ企業グループの鉄道、食品SM、百貨店が連携できるようになり、それがお客さまを理解した一貫性のあるコミュニケーションにつながります。

顧客データの一元管理によるお客さま思考の理解深化とコミュニケーション例

➁グループ横断導入実績のあるパートナーの選定

ロイヤリティプログラムの見直しはグループ全体の業務に関わります。社内の関係部署も多岐にわたるため、それぞれとの調整も重要になってきます。これらの業務をすべて社内で行うのは難しい場面もあるでしょう。そこで重要なのが、ロイヤリティプログラム導入実績のあるパートナーの存在です。

共通化・個別化すべき制度を含め、めざすべき姿や方向性の判断に迷ったときは、他社事例を踏まえた豊富な経験に基づいた的確なアドバイスができるパートナーが不可欠です。グループ全体でのロイヤリティプログラム制度適用は難易度の高い取り組みになりますが、グループ横断の導入実績のあるパートナーであれば、共にプロジェクトに伴走してくれる存在となるはずです。

テキストは⾃動で⽣成されます

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【まとめ】複数事業横断のロイヤリティプログラム見直しに重要なポイント

今回の記事では、複数事業を営む企業さまでのロイヤリティプログラム見直しに向けて重要なポイントを解説しました。背景や課題をふまえ、以下のようにまとめることができます。

  • 近年、ロイヤリティプログラムを見直す企業が増えている理由は、「デジタルテクノロジーの進化」により顧客体験全般においてタイムリーにきめ細やかなアクションが起こせるようになったこと、「事業上の背景」により、グループ内の各事業を連携し利用者を互いに送客しあって大きな商圏を築こうとしていることの2つ。
  • しかし現状では、ロイヤリティプログラムや会員システムは事業・組織ごとに運用されており、そのうえ、複数事業・施設をまたがるロイヤリティプログラム制度は設計・適用が難しいといった課題を抱えていることが多い。
  • よって、顧客データの一元管理によるお客さま理解を深化し、お客さま視点で必要な情報を必要なタイミングでお伝えすることが重要であり、グループ横断のロイヤリティプログラム導入実績のあるパートナーがプロジェクトに伴走することが重要といえる。

ロイヤリティプログラムを適切に見直すことができれば、よりよい顧客体験を提供し、商圏拡大の実現につなげることができるでしょう。ロイヤリティプログラムの改修をご検討中のみなさまは、ぜひご相談ください。

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