
3年間にわたり続いた新型コロナウイルスの影響は、私たち生活者の消費行動に大きな影響を与え、企業のDXも待ったなしの状況です。僕たちがこれまでおつきあいしてきた小売業も例外ではなく、オンラインショッピングへの対応やリアル店舗のデジタル化などが一気に進みました。そんな急速な変化に直面する顧客接点をもつ企業の方たちと、デジタルをうまく使いこなし新たな成長源泉を創り出すことにチャレンジしています。これらの取り組みを通じて、僕が考える仕事への取り組み方や価値を提供し続ける組織のあり方について紹介したいと思います。
いつも仕事をするときの基準は「楽しいこと」
僕がNTTデータで仕事をはじめて20年以上が経ちました。ありがたいことにたくさんのプロジェクトで、さまざまな企業の方とおつきあいをさせていただきました。20年もやっているわけですから成功を収めたプロジェクトもあれば、思い出したくもない苦い経験をしたプロジェクトもあります。僕の場合は、むしろうまくいかなかったことのほうが多かったかもしれません。ここで少し、これまで僕が携わった仕事について振り返ってみたいと思います。
FinTechやキャッシュレスという言葉がバズる少し前、僕が30代のころにとあるクレジットカード会社とインターネットを使ったペイメントのサービスを立ち上げていました。クレジットカード会社の社員に交じってサービスについて喧々諤々議論をする毎日。先方のオフィスに頻繁に出入りするあまり、アポなし顔パスで会議室に通されたこともありました。今思えばお客さまに対してずいぶん失礼な発言も多かったのですが、関係が悪化させることもなくサービスをリリースすることができました。
今思えば、僕もお客さまもそのサービスを通じて新しい体験を届けられるんだという、ワクワク・楽しさがあったからだと思います。
先日、昔からの仕事仲間と話す機会がありました。食品スーパーを運営しているダイエーさんと無人レジの店舗をつくっている、インフルエンサーを使ってアパレルの売上を上げようとしている、VRで野球のトレーニングに革命を起こそうとしている……頼まれたITシステムを開発するだけでなく全く新しい市場創造をめざしているのだと伝えたのですが、「NTTデータってそんなこともやっているの?」ととても驚かれました。
どちらの仕事も僕の原動力になっているのは「楽しいこと」だからです。もちろんビジネスですので、お客さまに価値を提供できているか?NTTデータは儲かるのか?をしっかり考えますが、その根底にはその仕事は楽しいのか?をいつも考えています。楽しいかどうかを基準に仕事をやっているのかと誤解を招きそうですが、僕にとって「楽しいこと」というのは「正しいと思う未来をつくる」ことを意味しています。
NTTデータはITシステムを作って売っている会社です。しかし、ITシステムは専門性が増し複雑化の一途をたどっているにも関わらず、システム単体の提供では競合との差別化は難しくなっています。ビッグテックが提供する新しい体験・デジタルサービスの浸透によって生活者のデジタルへの期待値があがってきたところに、新型コロナウイルスの流行が拍車をかけた結果、バックエンドの業務改善・効率化、さらには生活者への安全性・利便性の向上までも求められています。これから僕たちに求められるのはITシステムの提供を通じて、お客さま企業・インダストリーの未来をつくることです。お客さま企業と一緒に未来を考え、その未来を実現するしくみを提供することが、お客さま企業の事業成長に貢献できると考えています。
価値転換でアセットを磨きこむ
小売業が現在置かれている状況に目を向けると、立地と品揃えが店舗の優位性にできていた時代は陰りを見せ始め、これらを前提にしていた事業構造のままでは店舗を維持できなくなっています。このような変化は小売業だけではなく、生活者と接点を持つあらゆる企業に起こり始めています。これまで強みと考えられていたものがあっという間に価値を失い、逆に負担となって企業全体に重くのしかかってきます。
小売業の例で考えてみると、駅前の好立地な店舗や従業員の方々は固定費を押し上げる要因として、そのマイナス面に議論が向かってしまいます。従来の事業構造のままでは、店舗の売却や従業員の配置転換や人員整理を行わざるを得ず、結果長年培ってきた資産やノウハウを失うことになります。そして、これらの資産やノウハウは一度手放すとすぐには取り戻すのは難しい、その企業ならではの強みであることは間違いありません。
このような悲劇をなくすには、企業ならではの強みを見直し再定義して、企業の持っている資産やノウハウといった価値の転換を図ることが重要だと考えています。リアル店舗は、モノを売るだけの場所から生活者とブランドの出会いの場所へ。従業員の方は、生活者の理想のライフスタイルを実現するアドバイザーへ。これまでのモノやサービスを売る・買うだけの関係を超えたつながりを生活者とつくっていくことで、資産やノウハウにさらに磨きがかかり、新たな競合優位が築かれるのだと思います。
一部の百貨店では、すでにリアル店舗を生活者とブランドの出会いの場所とする取り組みを始めています。顧客エンゲージメント、カスタマーサクセスという生活者との深い関係づくりを意識したキーワードを頻繁に目にするようになったのも、こういった流れの表れであると感じます。そして、企業はこれらの活動を儲けることだけではなく、社会問題・環境問題を考慮した持続的な取り組みにしていく必要があります。
「楽しいこと」が「価値転換」につながる組織に
「マネージャーの仕事は、現場の活動を経営戦略シナリオに変換すること」。大企業でビジネスインキュベーションに携わる方に聞いたお話で、とても印象に残ったフレーズです。僕たちの仲間がつくっている新しい事業やサービスは、ひとりひとりの並々ならぬ熱量が生み出した賜物です。彼らが熱量をもって取り組んでいる楽しいことを、NTTデータや社会全体にとって意義のあるもの昇華させていくことが、今の僕の一番大事な仕事だと思っています。
これらの実現には、今までのNTTデータの強みを磨きこみ私たち自身も価値転換を図ることが必要です。そして、一緒に事業をつくっていく企業の方々、私たちにない強みをもつパートナーや社外の方々、これから出会う新しい仲間との協創が不可欠です。ぜひ、僕たちと一緒に新しい未来をつくりましょう。

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