サービス&チャレンジ

レジ無しデジタル店舗Catch&Go™が描く、With/Afterコロナ時代の店舗モデル

アメリカ、中国、南米など世界各地で本格展開が始まり、続々と店舗数が増えているレジ無し店舗。NTTデータでは2019年9月に実験店舗をオープンし、レジ無しデジタル店舗出店サービス「Catch&Go™」を提供中です。昨年から非常に大きな注目をいただいていましたが、WithコロナやAfterコロナと言われる時代を迎え、さらに注目が高まっています。その背景と最前線を、Catch&Go™の企画を担当する伊藤さんに聞きました。

伊藤さん伊藤愛理
株式会社 NTTデータ ITサービス・ペイメント事業本部 SDDX事業部 サービスデザイン統括部 デジタルエクスペリエンス担当
2016年NTTデータ入社。決済サービス「CAFIS」の開発・維持に従事した後、現在はレジ無しデジタル店舗出店サービス「Catch&Go™」の企画・営業を担当。店舗のデジタル化に向けたソリューションの提案を行う。

Catch&Go™のサービスと実現を支えるテクノロジー

―まずはCatch&Go™がどのようなサービスか、改めて教えてください。

Catch&Go™は、スマホのアプリを使って入店するだけで、レジ会計なしで買い物が完結する店舗です。

アプリを起動し、QR コードをゲートにかざして入店(注1)すると、その後はスマホを使う必要はなく、棚から取った商品は自動的にオンラインカートに追加されます。買い物が終わったらレジ会計をすることなく店舗を出て、数秒後にはスマホにレシートが送信される、という流れになっています。(注2)

Catch&Go™利用イメージ
Catch&Go™の利用イメージ

注1)QRコード認証だけでなく、顔認証による入店も導入しています。詳細は、プレスリリースをご参照ください。
注2)Catch&Go™については、こちらの記事でもご紹介しています。

―人が商品を取ったことはどうやって認識しているのですか。

天井に設置したカメラが、人の動線(動画)と手に取った商品(画像情報)を、それぞれ解析します。事前にAI でさまざまな角度の商品画像を学習させておくことで、店内カメラによるリアルタイム解析を実現しています。併せて、棚に組み込んだ重量センサーによって、重量の増減から手に取ったり戻したりした商品を認識します。

よほど特殊な行動をとらない限り、人の動きや何を手に取ったかなどの情報は、ほぼ確実に捉えられます。一度商品を手にとって棚に戻した場合も、重量センサーやカメラがきちんと把握します。

“三方良しの導入メリットに加え、感染リスク低減にも貢献

―Catch&Go™を導入するメリットも改めて教えてもらえますか。

お客さま、店舗、小売事業者の三者それぞれにメリットがあります。まず、お客さまは、手間なく待たずに買い物ができますし、店内行動や購買行動に基づいたクーポン割引などのサービスを受けることが可能です。次に、店舗の運営者にとっては、従業員の省力化ができることはもちろん、混雑時のレジ待ちによる機会損失の低減や、お客さまデータに基づいたサービス提供による売り上げ向上も期待できます。また、小売事業者は、お客さまの購買行動データを活用した事業の高度化が可能と考えます。

―コロナ禍によって特に注目を集めているポイントがあると聞きました。

はい、Catch&Go™は、With/Afterコロナの世界における感染リスクの低減が可能なサービスです。

Catch&Go™では、レジでの商品や金銭の受け渡しが発生しないため、お客さまと従業員は接触することがありません。また、入店者の把握や入店人数のカウント、入店制限ができることから、店内が密にならないようにコントロールすることや、混雑状況をお客さま・店舗運営者双方が一目で把握することも可能です。さらに、Catch&Go™によって省力化できた従業員の稼働を、消毒などの感染症対策の業務に充てることも期待できます。

Catch&Go™入口ゲート
Catch&Go™の入口ゲート

このように、接触機会の低減・コントロールと見える化により、安心してお買い物を楽しんでいただけることから、WithAfterコロナにおいてますます注目をいただいています。

新店舗フォーマットの開拓と感染症対策の両立も実現

―注目を集めるCatch&Go™ですが、導入しやすい店舗形態はありますか。

設備・機器の導入が必要になるので、まずは新店舗フォーマットとしての導入がしやすいと考えています。

特に、オフィスビルや病院、工場、学校など、スペースや人員配置の点から従来の出店基準には満たなかった小さな商圏、マイクロマーケットなど新たな領域の開拓に有用なことは、実験店舗を通して確認しています。こうした場所は、限られたお客さまが繰り返し利用するため、アプリのダウンロードなど事前準備の手間を超える利便性を感じられるはずです。

また、すべてをレジ無し店舗に代えることが難しいスーパーマーケットやドラッグストアにおいても、ストアインストアというフォーマットでCatch&Go™を導入可能です。通常の有人エリアにCatch&Go™を併設し、よく使われる商品や迷わずすぐ手に取れる商品だけを集めることで、決まった商品をすぐに買いたいお客さまのニーズに応えられます。

Catch&Go™企画チームのみなさん
Catch&Go™企画チームのみなさん

―マイクロマーケットやストアインストアとしてのCatch&Go™について、With/Afterコロナの観点で注目すべき点はありますか。

はい、マイクロマーケットは狭いスペースに多くの人が集まるので、感染予防が特に重要になります。Catch&Go™ではお客さまと従業員は接触の必要がなく、お客さまの入店人数もコントロールできるので、安心してお買い物いただけると考えています。また、ストアインストアについては、そこで省力化した従業員の稼働を既存エリアでの感染症対策に充てるなど、既存エリアも含めた店舗全体での感染予防につなげることができます。

With/Afterコロナ時代に選ばれる店舗とは

― Catch&Go™は感染症対策にも貢献できるとのことですが、実際にこのコロナ禍でお客さまの買い物行動は変化していますか。

With/Afterコロナの状況下では、外出を自粛する方が増え、買い回りの機会が減っています。また、少しでも感染リスクを減らすため、短時間で効率よいお買い物が好まれる傾向が高まっています。実際に、料理写真共有アプリ「SnapDish」を運営するヴァズ株式会社の調査(20206月)によると、買い物に行く頻度が「減った」と答えた人は51%、買い物にかける時間が「短くなった」と答えた人は52%という結果がでています。

スナップディッシュ調査結果
出典:料理写真共有アプリ「スナップディッシュ」調べ(http://vuzz.com/?p=4289)

―そういった状況でお客さまに選ばれるために、店舗には何が必要でしょうか。

買い物に行く頻度、買い回りにかける時間とも減った結果、お客さまは買い物を行う店舗を厳選し、「お気に入り」の店舗を見つけて、「お気に入り」の経済圏で行動するようになると考えています。モノを買うだけであればどの店舗を利用しても同じですが、お客さまに気持ちのよい購買体験を提供できれば、選ばれる存在となり、ロイヤルカスタマーの囲い込みにも繋がるものと考えます。

感染予防に優れている、手間なく待たずに買い物ができるというのは必須事項として、ECサイトも含めた形で個々人の趣向を踏まえたサービスやオファーなどを提供できることが重要ではないでしょうか。

一貫性ある顧客体験をめざし、Catch&Go™とオンラインサービスの統合へ

―Catch&Go™の今後について教えてください。

Catch&Go™は昨年から非常に多くのお客さま企業の反響をいただき、実店舗出店の検討も着々と進んでいます。まずは、感染リスクの低減や店舗の省人化・省力化を目標としつつ、その先には、新たな店舗形態の開発やデータを活用したマーチャンダイジングの改善、商品開発など事業の高度化を見据えています。さらには、With/Afterコロナの時代にますます需要が高まるECサイトなどのオンラインサービスとCatch&Go™を統合した、一貫性のあるサービスを実現したいと考えています。

Catch&Go™実験店舗の壁
Catch&Go™実験店舗の壁には、OMO(Online Merges with Offline) Storeと銘打たれていました

―オンラインサービスとCatch&Go™の統合について、もう少し詳しく教えてください。

これまで当社では、EC サイトの構築・運営や決済領域に関する多数の技術・ノウハウを培ってきました。それらとCatch&Go™で取得できる店内データを連携することで、利用者の習慣的な購買行動に基づいたEC サイトのクーポン発行や、人々の行動データや動線の分析による既存店舗の棚割改善ができるようになると考えています。Catch&Go™での新規売上創出に加え、EC サイトでの売り上げ拡大や既存店舗の収益改善にもつながり、オンラインとオフラインを統合した真のデジタルマーケティングが実現できます。

コロナ禍によって、ECサイトなどのオンラインサービスの充実だけでなく、いわゆるOMO(Online Merges with Offline)の考えに基づいた店舗の役割の見直し・デジタル化の取り組みは加速しています。Catch&Go™はまさに、こうした時代の要請に応えるサービスだと考えていますので、今後を見据えながら取り組みを続けていきたいと思います。

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