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小売・飲食店舗の『非接触』事例から見る、新型コロナの消費行動変化と企業の対応とは

新型コロナウイルスの影響で高まる「非接触」ニーズに対し、小売・飲食などのリアル店舗でお客さまや従業員に安心して過ごしてもらうために、企業はどう対応すべきなのか、顧客接点領域のマーケティングソリューション「CAFIS Explorer」の企画営業を担う坂井さんに、各企業の取り組み事例などを交えて語っていただきました。マーケティング戦略の策定や、店舗のデジタル化検討の参考にどうぞご一読ください。

坂井謙太

坂井謙太
株式会社NTTデータ ITサービス・ペイメント事業本部 SDDX事業部 マーケティングデザイン統括部 デジタルマーケティング担当 主任
金融系SEとして勘定系システムの開発に従事した後、コンサルタント部門へ異動し、流通業、鉄道業、サービス業のお客様や、当社決済事業部門に対して事業戦略立案や新規サービス創出のコンサルティングをメインに実施。現在は、CAFIS Explorerの企画・営業担当として、ポイント・会員管理サービスを起点に、お客さま企業の顧客ロイヤル化や顧客接点領域のDX促進に取り組む。

リアル店舗でのお買い物意識~高まる「非接触」ニーズ~

感染防止対策と経済活動の両立が求められる現状において、三密の防止や、人と人との距離をとるソーシャルディスタンスの必要性は日々メディアで発信され、みなさまも、耳にしない日はないのではないでしょうか。

このような環境において、個人の感染防止意識は継続して高い状態です。事実、「ソーシャルディスタンス」を話題とした直近1ヶ月のツイートを見ても、日々数万件が発信されており、人やモノとの距離を意識している人の多さがうかがえます。

ソーシャルディスタンスに関するツイート数(なずきのおと(https://nttdata-nazuki.jp/solution/index.html#nazuki_oto)より取得)

また、電子チラシサービス「Shufoo!」による主婦約4万人への買い物に対する意識調査結果(2020年6月)によると、「新型コロナウイルス流行後に、お買い物に行くスーパーで気になることはありますか?」の質問に対して、「ショッピングカートやカゴの消毒」と回答した人が81.7%、「おつりを手渡しされる」と回答した人が59.0%という調査結果がでており、リアル店舗における消費行動でも、人やモノとの接触を避ける「非接触」のニーズが高いことが読み取れます。

Shufoo!意識調査結果
出展:株式会社ONE COMPATH  『Shufoo!』 調べ(https://biz.shufoo.net/column/research_report/6857/)

お客さまの「非接触」ニーズの高まりとあわせて、リアル店舗を運営する各企業にも、接触感染防止や混雑緩和の取り組みが強く求められているのが実態です。小売業界の業界ガイドライン(注1)では取り組みの必要性が定められており、各企業はお客さまや従業員の安心安全を確保した上での事業継続を求められています。

③ 接触感染・飛沫感染の防止
・ 従業員と顧客の接触機会を減らし、飛沫感染を防止するため、以下のような取組を行う。
✓ 透明間仕切り等の設置などによるレジ前での飛沫感染防止の取組を行う。(透明間仕切り等を設置する場合は、透明間仕切り等が従業員や顧客に触れないように注意する。)
✓ レジにおいてコイントレーでの現金受渡を励行する。
✓ 自動精算機・キャッシュレス決済の利用を促進する。

⑥ 店舗内混雑の緩和
・ 店舗の規模や立地条件などの実情に応じ、店内の人の密集を避けるための工夫として、以下のような取組を行う。
✓ 混雑につながるような販売促進策を自粛する。
✓ 事前の買物リスト作成等による滞留時間短縮を呼び掛ける。
✓ 混雑時間帯に関する情報提供によりオフピークタイムでの来店を呼び掛ける。
✓ ネットスーパー、移動販売等の利用の促進を図る。
✓ 混雑時の入店の制限のほか、店舗・施設などで混雑や待ち列が生じる可能性がある場合は入店者の分散化が図られる方法等を検討する。

注1)小売業の店舗における新型コロナウイルス感染症感染拡大予防ガイドライン

お客さまの「非接触」ニーズの高まりと、企業における感染防止方針を踏まえ、リアル店舗では具体的にどのような取り組みが必要なのでしょうか。次章では小売・飲食における事例を紐解きながら、深掘りしていきたいと思います。

小売・飲食のリアル店舗事例に見る、「非接触」に重要な観点とは?

この章では、「従業員とお客さまの接触を減らす観点」と「お客さま同士の接触を減らす(=密集を防ぐ)観点」の2つの観点で、小売・飲食各企業の取り組み事例を見ていきたいと思います。

①従業員とお客さまの接触を減らす観点
現在注目されているのが、「モバイルオーダー」です。“事前にスマホで注文し、あとはリアル店舗で商品を受け取るだけ”のサービスが、スターバックスコーヒー、マクドナルド、すき家といった大手飲食チェーン店で広がりを見せています。

「モバイルオーダー」は以前より、「レジ待ち行列の緩和」や「注文の聞き取りミス・伝達ミスによるヒューマンエラーの回避」を目的に、一部企業で導入されていました。それがコロナ禍によって、「非接触のコミュニケーション手段」としてより一層の注目を浴びています。

モバイルオーダー画面イメージ
モバイルオーダー画面イメージ。左:スターバックスコーヒー、右:マクドナルド

アメリカ本国のスターバックスコーヒーでは、2020年7月の発表時点で、モバイルオーダーの売上が注文全体の22%に達しています。新型コロナウイルス拡大前(2020年1月)では17%だったので、わずか半年で5%も伸びたことになります。

上述の「モバイルオーダー」の例のように、接触機会が低減され、利便性も向上する「モバイル接点」を活用した消費行動は、日本国内でも今後広がりを見せると予想できます。

②お客さま同士の接触を減らす(=密集を防ぐ)観点
次は、来店するお客さま人数を分散するため、オフピークでのお買い物を呼び掛ける企業の事例を見てみたいと思います。

ローソンでは、店舗ごとに来店データを分析し、「比較的混雑している時間帯」と「混雑が少ない時間帯」を一覧できるポスターの店頭掲載や、WEBサイトで店舗混雑状況を検索できるサービスを提供しています。また、スーパーマーケットを展開するマルエツでも、Tポイント・ジャパンと共同して店舗内の混雑をWEBで配信するサービスに取り組んでいます。

ローソン店舗掲出ポスターイメージ
株式会社ローソン店舗掲出ポスターイメージ(出展:https://www.lawson.co.jp/company/news/detail/1397013_2504.html)

実は私たちNTTデータも、全国約2.8万店のスーパーやドラッグストアなどの店舗近辺について、曜日・時間帯別混雑傾向が調べられるモバイルアプリ「おでかけ混雑マップ」の無償提供を開始しています。(詳細はこちら

おでかけ混雑マップアプリ
おでかけ混雑マップアプリの画面イメージ

さらに最近では、「呼び掛ける」だけでなく、ポイント還元やクーポンといった利用者インセンティブを用意し、「誘導する」動きもでてきました。例えばイオンでは、「空いてる時間に、ゆったりお食事」をコンセプトに、オフピーク(14:00~17:00 および 20:00~閉店)のレストラン、カフェ、フードコートでのWAON支払いでポイント5倍になるキャンペーンを実施中です。(参考:https://gion.aeonmall.com/news/event/1559)

このようなオフピークでの来店を促す流れが成立している理由のひとつに、時差出勤やテレワークの普及で、来店時間帯をある程度自由に選べるようになった生活背景があると考えられます。

行動変容のきっかけを企業側がポイントやクーポンなどのインセンティブで作る取り組みは、今後加速する可能性があると考えます。

変化するリアル店舗での消費行動~企業はどう対応するのか?~

前述の通り、モバイルオーダーやオフピークへの来店誘導は確かに増えてきていますが、これらが今後定着するには、「非接触」ニーズに合致しているだけでなく、そのサービスの利便性も重要だと考えます。すなわち、「安心安全と便利な体験が共存するサービス」が重要になります。

そのための1つの方法は、「モバイル接点への集約」ではないかと、私たちは考えています。

例えば、前章ではモバイルオーダーとオフピークへの来店誘導を別事例として紹介しましたが、「モバイルオーダーの商品受け取り時に、なるべく混雑を避けて来店したい」というお客さまニーズも考えられます。もちろん、その業種・業態に合わせたお客さま行動の理解が前提ですが、例えばオーダーも混雑状況確認もモバイルアプリ1つでできると、より良い体験になるかもしれません。

「非接触」ニーズによってモバイル接点の重要性が増す現状だからこそ、改めて考えてみる価値があるのではないでしょうか。

また、お客さまの行動変容をもたらす“インセンティブの質”も重要な点と考えます。

お客さまが新しい生活様式による行動変容を起こしやすくなっているとは言え、クーポンやポイントを一律ばらまく、といった単純なインセンティブでは、無駄打ちになってしまい、サービスとして成立しない可能性があります。

オフピーク誘導が成立し、より安心安全な買い物体験を実現するためには、お客さまが「来店時間を変えよう」と思える、精度の高いインセンティブが必要と考えます。

事実、NTTコムオンライン・マーケティング・ソリューション株式会社の調査結果によると、約60%のユーザーがクーポンの有無・内容によって消費行動を変えたことがあると回答しています。しかし内訳を見ると、「29%のユーザーが消費行動を起こした」一方で、「30%のユーザーが消費行動を起こすのをやめた」という結果でした。魅力的なクーポンであれば利用を促進できますが、その逆も起こりえることがうかがえます。

クーポンの有無や内容によって行動を変えたことがあると回答した割合
クーポンの有無や内容によって行動を変えたことがあると回答した割合(NTTコムオンライン・マーケティング・ソリューション株式会社の調査結果をもとに筆者作成)

では、人によって感じ方の異なる「魅力」をどうすれば明らかにできるでしょうか。顧客理解が重要であることは明らかですが、「顧客理解と一言で言ってもどんな手段があるのかわからない」「顧客1人1人にマッチしたインセンティブを検討するには時間も費用もかかる」と言ったお悩みの声もよく聞きます。

このような課題こそ、正にデジタル技術や関連する手法によって解決・効率化できるものです。UXデザインアプローチによる課題仮説の可視化、仮説を検証しお客さまの解像度(理解)を高めるデータ分析、解決策としてのモバイル活用やお客さま(会員)・インセンティブ管理の仕組みなど、当社でも多くの解決策と事例があります。もしお悩みの点がございましたら、ぜひ一度ご相談いただければと思います。

今回は、「非接触」ニーズの高まりによるモバイル接点強化の必要性を通して、インセンティブの活用、お客さま理解の重要性などをお届けしました。新型コロナウイルスの影響で私たちの生活は大きく変化しています。大きな変化の中で事業を推進する企業のみなさまにとって、この記事が少しでもお役にたてましたら幸いです。

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