事例と成果

【V-BALLER】VRで離島の野球部を変革!隠岐高校硬式野球部の挑戦

NTTデータが開発・提供中のVR技術を活用した打撃トレーニングシステム「V-BALLER」。この記事では、2022年4月からのアマチュア向け提供開始に先立って活用いただいた隠岐高校硬式野球部の取り組みについて、同野球部の渡部監督、元プロ野球選手の久古さん、鵜久森さんにそれぞれお話を伺いました!V-BALLERによってどのような未来を実現できるのか?その可能性に迫ります!

VR技術を活用した打撃トレーニングシステム「V-BALLER」とは?

V-BALLERは、野球のバッティング練習をVR空間で行えるNTTデータの新サービスです。これまでプロチームに提供していましたが、2022年4月からはアマチュア向けにも提供を開始しています。

V-BALLER公式Webサイト
https://v-baller.com/

V-BALLERが機能拡張、アマチュア向けにも提供開始
https://www.nttdata.com/jp/ja/news/release/2022/042702/

V-BALLERでは、時間と場所を問わず練習できることに加え、バッティングをデータ計測できることによって、打者のパフォーマンスを可視化できます。また、VR空間上では実際の投手の投球を何度でも再現できるため、苦手な投手・投球を繰り返し練習することや、アマチュア選手がプロ投手の投球を何度も体験することもできます。

本プロジェクトの紹介 -隠岐高校硬式野球部変革プロジェクト

隠岐の島、隠岐高校野球部

今回のプロジェクトの舞台は、島根県からフェリーで北へ2時間半の場所にある隠岐の島です。ローソク島と海鮮が有名で観光の人気が高く、近年は都会から隠岐の島に移住する人も増えています。魅力の多い隠岐の島ですが、人口は13,000人ほど。また、高校は2校しかなく、硬式野球部があるのは今回プロジェクトを実施する隠岐高校のみです。

その隠岐高校硬式野球部、部員数はプロジェクト開始時わずか9名。投手も少ないため、肩への負担を考慮すると実際の投手を相手にしたバッティング練習は少ししかできないことが課題になっていました。

また、島内に硬式野球部が1校しかなく、遠征にも時間とお金を要することから、練習試合の数が少なく、さまざまな投手、球種、球速の経験値を積むことができません。加えて、追い打ちをかけるように、新型コロナウイルスの影響で島外に練習に行くことや、島外から指導者を呼ぶことも難しい状況となっていました。

元プロ野球選手のリモート指導プロジェクト

このような課題を解決するために実現したのが、V-BALLERを活用した元プロ野球選手による高校野球リモート指導プロジェクトです。今回指導にあたったのは、東京ヤクルトスワローズで投手として活躍した久古さん、同じく東京ヤクルトスワローズで打者として活躍した鵜久森さんと今浪さんです。

測定結果
V-BALLERの測定結果をもとにリモート指導をしている様子(左から、隠岐高校硬式野球部、今浪さん、久古さん、鵜久森さん)

NTTデータが参画したきっかけは、久古さんからのお声がけによるものです。生徒の特徴が見えづらいというリモート指導の課題解決に、V-BALLERによるパフォーマンス可視化が活用できるのでは?とのご相談から、本プロジェクトは始まりました。

プロジェクトでは、隠岐高校硬式野球部の各選手が苦手意識を持っている球種を中心に、V-BALLERを使って日々練習をしてもらいました。また、V-BALLERにて計測したバッティングのパフォーマンスデータに基づいたリモート指導を3か月にわたって行いました。

それでは次に、プロジェクトに関わった方たちへのインタビューから、どのような取り組みだったのかをさらに具体的にひも解いていきたいと思います。

部員の少なさや地理的な壁を越えられる「V-BALLER」 -隠岐高校硬式野球部 渡部監督

まずインタビューさせていただいたのは、隠岐高校硬式野球部の渡部監督です。

渡部先生
隠岐高校硬式野球部監督の渡部さん

-リモート指導を活用いただいた感想をお聞かせください。
渡部さん:今回の取り組みを通して生徒の成長をすごく感じ、遠隔でも指導できる方法があると身をもって理解できました。V-BALLERを活用したリモート指導によって、プロとアマや、都会と地方の壁がなくなったのはうれしいです。高校生がプロに教えてもらうという機会はなかなかなく、継続的に指導いただくのは今回が初めてでしたが、それもリモートという手段があったからこそ実現しました。ありがたいです。

プロジェクトを通して感じた変化は、生徒たちにデータ活用という視点が生まれたことですね。データをもとに元プロ選手に丁寧に教えてもらうことで、闇雲に練習するのではなく、改善点とそれを受けてどう取り組むかを常に考えられるようになったのは大きいと思います。

-V-BALLERに感じたメリットや、練習への活用について教えてください。
渡部さん:部員の少なさや地理的な課題によって、どうしても練習の量・質にハンディキャップを抱えていた中で、その解決策として大きなメリットを感じました。本土の高校に比べてレベルの高い経験値を積みにくかった中で、色々な投手の投球をVRで体験できたのは生徒にとっていい経験になったと思います。

中でも、同じ投球を何度も再現できる点が大きいと感じました。2球続けて同じ投球を再現することは、現実では不可能です。自分の苦手球種や、練習では十分に体験できない球を繰り返し体験することで、生徒がその投球に慣れ、反応しやすくなりました。

もうひとつ感じたメリットは、基礎と実戦の間の練習ができるようになったことです。バッティングを指導する際、今まではティーバッティングを練習したあとで、実際の投球に対するバッティング練習を行っていました。その間にVR空間でのバッティング練習が入ることで、実戦的な投球に対するバッティング練習に向けて段階を踏めるようになりました。V-BALLERが基礎的な形作りと実戦的な練習の中間となる練習を担うことで、基礎面と実戦面の指導を行ったり来たりしやすくなりました。

客観的データに基づく継続的な指導が実現 -元プロ野球選手 久古さん・鵜久森さん

続いて、指導側の元プロ野球選手の久古さんと鵜久森さんにインタビューさせていただきました。

久古さん
左:元プロ野球選手 久古健太郎さん
右:隠岐高校硬式野球部員

-指導者側から見た、リモート指導の具体的な効果や従来のリアル指導との違いをお聞かせください。

久古さん:V-BALLERを活用したリモート指導には大きな効果があったと思っています。中でもフォーム改善には手ごたえを感じました。V-BALLERはバッティングにおける頭、腰、手の動きが見られるので、例えば「頭の動きが激しい」など、客観的データで可視化するまで気付けなかった課題を選手に気づいてもらえるようになりました。これはリモート指導でも十分実現できることだと思いました。

データを用いた指導は従来の指導に比べ、過去との比較分析によって継続的な指導ができる点がいいですね。動画だけだと過去と現在で選手の動きを比べても、頭や腰がどう動いているかは見えにくいですが、グラフだと動きの違いが時系列で見やすいですね。

鵜久森さん:僕も久古と同じで、フォーム改善にリモート指導の効果を感じました。選手の現状を説明するうえでV-BALLERのデータが使いやすかったです。リアルでは、例えばピッチャーに対するタイミングの取り方などは体を使ったほうが教えやすい点はあります。ただ確実に言えることは、リモート指導ができることによって幅は広がりますね。マイナスはないと思いました。

鵜久森さん
奥:元プロ野球選手 鵜久森 淳志さん
手前:隠岐高校硬式野球部員

-今後V-BALLERは野球においてどのように活用できそうですか。
久古さん:今回のプロジェクトと同じように、パフォーマンスデータの可視化とそれを踏まえた練習指導がまずありますね。V-BALLERはデータ可視化に優れているので、選手の悩みや課題を確実に改善するためのデータ活用に有用性を感じます。

また、野球をしたことのない人に手軽にバッティングを体験してもらえるツールとしても利用されてほしいと思います。最近は野球人口が減ってきていますし、入口になるといいですね。

鵜久森さんリモート指導だけでなく、リアルな練習のツールとして今後数多く使われるようになっていくと思います。私も実際に菊池雄星投手(元埼玉西武ライオンズ)のVRピッチングを体験したのですが、実際に対戦した時の印象そのままでした。これを試合前に体験できるのはとてもいい練習になりますね。

だからこそ、バッティング自体の再現ももっとリアルになることを期待しています。例えば、打った時の感覚を振動で感じられるとかですね。ただ、今V-BALLERで提供されている、軌道が見えるということだけでもすごく意味があると思っています。特に高校野球は初めての対戦相手が多いので、軌道が事前にわかるだけでもかなり大きいですね。

リモート指導から地方創生へ、「V-BALLER」の大きな可能性

今回の高校野球リモート指導プロジェクトを通し、V-BALLERが野球部員の少なさや地理的なハンディキャップを解決する可能性が十分にあることがわかりました。また、元プロ野球選手から見ても高い精度で投球を再現できているからこそ、練習効果が高いことが明らかになりました。

さらに、今回の隠岐高校のような離島の地方創生にも、V-BALLERは貢献できるのではと感じました。島民の方からは、野球のために家族ごと島から出て行ってしまうことがあるということ、そしてそうした課題が改善されたらうれしいという声をいただきました。もともと子どもたちが生まれ育った場所で充実した体験をしてほしい、島に住み続けて夢を追えるようになってほしい、そんなお話もいただきました。とても素敵な考えですし、私自身もそうなることを願っています。

V-BALLERに興味をお持ちの方はぜひ公式Webサイトもご覧ください。また、ご質問や体験依頼などお気軽にご連絡ください。

また、今回プロジェクトに参加いただいた今浪さん、久古さん、鵜久森さん、渡部さん、若林さんと、V-BALLERのプロジェクトオーナーの荒さんが「Deloitte Digital Week 2022」に登壇します(登壇日:5月24日)。本記事で紹介させていただいたプロジェクトについての講演ですので、興味のある方はぜひご覧ください!

https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/technology/articles/dd/ddw-2022.html

隠岐高校プロジェクト
左から:デロイトトーマツコンサルティング久古さん(元プロ野球選手)、デロイトトーマツコンサルティング若林さん、元プロ野球選手鵜久森さん、デロイトトーマツコンサルティング柘野さん、NTTデータ林(執筆者)、NTTデータ荒さん、海士町役場久保さん、村松さん、デロイトトーマツコンサルティング大村さん(当時)

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