事例と成果

元プロ野球選手・里崎智也さんも体験!VR打撃トレーニングシステムV-BALLERの魅力を語る

NTTデータが開発・提供中のVR技術を活用した打撃トレーニングシステム「V-BALLER」を元プロ野球選手、里崎智也さんが体験。そして里崎智也さんをはじめ、開発担当の荒智子さん、スポーツアナリスト・金沢慧さん、Taiwan Rakuten Baseball,Inc球団本部副本部長・神原謙悟さん、スポーツライター・キビタキビオさんの5名に「V-BALLER」の魅力を語っていただきました!

元プロ野球選手・里崎さんが体験したV-BALLERの世界

左上から時計回りに、キビタさん、里崎さん、荒さん、金沢さん(※神原さんは別途リモート参加)

荒さん:V-BALLERはVR技術を活用したバッティングトレーニングシステムです。ヘッドマウントディスプレイや付属のコントローラにより、VR空間上で投手の球種や球速などリアルな投球を体験できるシステムとして、2017年から国内外の複数のプロ野球チームに提供してきました。2022年4月にはさらに機能を強化すると共に、アマチュア野球にもサービスの提供を始めています。今回、元プロ野球選手である里崎さんにV-BALLERを体験いただいたので、お話を伺いたいと思います。

金沢さん:早速ですが、V-BALLERはリアルな野球そのままを再現しようとしています。里崎さんはV-BALLERに100点満点中何点の評価をつけますか?

里崎さん:そうですね。50点くらいじゃないですか。50点っていうと低いと感じるかもしれませんが、僕の評価基準では50点は相当高いと思います。野球は3割達成すれば優秀な打者と言われる世界ですからね。

金沢さんプロ野球の世界で活躍した里崎さんが持っている世界観の半分をV-BALLERが再現しているというのはすごいことだと思いました。

里崎さん:また、これは僕の持論ですが、スポーツにおいて通常教えることができるのは50%まで。それは型、つまりバッティングでいうとフォームを教えることはできる。でも本当に大事なのは残りの50%、それはタイミングなんですけど、タイミングは感覚なので、指導することができないんです。V-BALLERはその残りの50%、つまりタイミングを学ぶことができると感じました。

金沢さん:里崎さんの場合は、タイミングはどうやって身につけたんですか?

里崎さん:これは反復練習しかありません。僕は頭の中に相手投手の映像があるので、その映像を思い浮かべて練習をしていました。そういった意味でいうと、初対戦のピッチャーのイメージを膨らませることができたり、フォームのチェックができたりするV-BALLERは非常にいいツールだと思います。自分に足りないものを補うとか、練習場所も選ばないので自宅でも練習をするとか、リアルな練習を補助するものとして有効に使えるんじゃないでしょうか。

荒さん:本当にそうですね。V-BALLERがバッティング練習を100%代替するものになるというのではなくて、補完ツールとして使ってもらうことで、より効果的・効率的にパフォーマンスの向上につながれば嬉しいです。

まだ見ぬ剛速球をバーチャルで体験

V-BALLERプレイ中の画面

神原さん楽天イーグルスでもV-BALLERを導入していました。里崎さんがタイミングとおっしゃっていたように、選手たちは投手の手からボールがリリースされてからベースに到達するまでのタイミングをとるツールとして活用していました。

キビタさん:私も実際に体験させていただいて、タイミングの面ではかなり有効だと感じました。左投手が150㎞のストレートを投げる設定になっていたのですが、バットをピクリとも動かさないうちにボールが来てしまいました。それくらいリアルなので、150㎞の速球を見たことがない人でもV-BALLERで繰り返し練習をすればタイミングが取れるようになると思います。初めて見る投手や苦手意識のある投手を攻略するためとか、選手によっていろいろな練習に使えると思います。

金沢さん:これまでVRは面白さや新しい技術ということばかりが先行して、実際に何の練習に使えるのか、どう活用していくのか、というところは分かりませんでした。神原さんはVRのメリットをどのように感じていますか。

神原さん:V-BALLERには初期の開発段階から関わらせていただいていますが、やはり投球を完全に再現できるというのが最大のメリットです。実際の野球ではすべてが同じ状況というのは有り得ません。バッターは2度と同じボールが来ないという状況で打席に立っている。それを再現して、軌跡を確認し、練習できるというのは技術を高める上で非常に大きいと思います。

ビタさん:VRは3次元で再現できるのがこれまでとの大きな違いですよね。スクリーンにボールを投げるピッチャーが写し出されるバッティングセンターに行けば、タイミングは体験することはできます。それがVRでは球速、高さ、コース、ボールの変化に至るまでまったく同じ球を体験できる。これはすごいことですよね。

私は高校野球の取材に携わっていますが、プロだけじゃなくて、アマチュアの方もV-BALLERの恩恵が受けられたらと思います。一部の強豪高校以外は、140㎞以上の速球を投げるピッチャーの球を打つ体験は頻繁にできるものではありません。それがV-BALLERを使えば普段からタイミングの取り方やスイング軌道を作る練習ができるようになります。経験を積むという意味ではプロ野球よりもアマチュア野球で今後VRはもっと必要になっていくと思います。

荒さん:高校野球で大きな課題に感じているのは、環境条件などから、練習が満足にできない学校があることです。お金がかかるので遠征に行けないという離島の高校や、冬は雪で覆われてグランドが使えないという雪国の高校など、練習環境が十分に整っていないとリアルでは色々な球種、球速の体験をすることが難しい。でも、V-BALLERがあればリアルでは体験できないことを補完できるということで、導入したいという要望を多くいただきました。

キビタさん:試合数が少ない、打席機会が少ないと、能力は伸びていきません。能力はあるけれども、打席に入る機会に恵まれなかった選手を引き上げる効果がありそうですね。

神原さん:プロ野球でも一軍のピッチャーの投球を体験できない二軍、三軍の選手はぜひ練習で使ってほしいですよね。

荒さん:経験値や機会を補完するという意味ではV-BALLERはとても有効だと思います。
実際にプロ野球でも対戦するピッチャーのイメージトレーニングに使いたいというニーズがすごく多かったですね。その日の先発投手が決まったタイミングで、先発投手が直近の試合で投げていた投球をV-BALLERで体験して、感覚を掴んでからバッターボックスに立っていたようです。

打者の能力を把握して、成長を加速

金沢さん:神原さんはプロ野球の球団内で、選手の能力やパフォーマンスを評価する必要がある立ち位置かと思います。V-BALLERは頭、バット、腰などの動きをセンシングすることで、選手のスイング傾向やタイミングのズレを計測し、パフォーマンスをデータ化することができます。選手の能力を把握するためにV-BALLERがどのように活用できるかを教えてください。

神原さん:そうですね、例えば150㎞の速球を打てたとしても、それがたまたまなのか、本当に技術があるのかどうかが、データを分析すると分かります。最初から150㎞の速球に合わせる能力がある選手を使った方がいいですよね。V-BALLERによってどの選手にどういう能力があるかまで分析できるようになりました。

荒さん:神原さんがおっしゃっていただいたことは、プロ野球の世界でより強く求められてきた分野です。どの投手の球をどの選手が打ち返す能力があるのかを可視化するというのは、VRによって初めてできるようになった領域と言えるかもしれません。

詳細データの確認画面(例)

キビタさん高校野球の場合でも、見たことがないスピードのボールと対峙した時に、自分のバッティングフォームをキープしてスイングできるのかは大きな課題になります。145㎞キロまでなら自分の型でスイングしてもある程度は打てるけれども、それ以上のスピードになると自分のスイングができなくなり、どうしてもバットに当てにいってしまう。そういう選手の能力や癖も把握し、課題を克服できるということですよね。

荒さんバッティングのパフォーマンス可視化はこの5年間で改善を重ね、強化してきた技術です。操作性や選手にどうフィードバックをするのかといった機能も含めて、これまでいただいたご意見を反映しつつあるところです。さらに多くの方にV-BALLERをご利用いただきデータが取れるとさらに改善ポイントが分かり、さらに進化していくと思います。

リアルの練習を補完するツールとして活用してほしい

VR機器の装着イメージ

金沢さん:ここまでみなさんと話してきたことで、V-BALLERが新たな練習方法の一つとして、とても有効なものであることが分かりました。ただ、指導者にとってはどのように練習に取り入れたらいいのか分からないと感じてしまうかもしれません。V-BALLERを気軽に使っていただくために、どうしたらいいのか。荒さんが考えていることはありますか。

荒さん:私たちの立場からすると、V-BALLERがいかに使いやすいか、役立つものかを知っていただく必要があると考えています。そのためにはプロもアマチュアも問わず、バッティング技術が向上したという具体的な実例をいろいろと発信することが大切だと考えています。

金沢さん:具体的にどんな使い方をしてもらいたいという考えはありますか?

荒さん:やはり一番は、普段はなかなか対戦できない剛速球やキレのある変化球をVRで体験し、反復練習できるのはプロもアマチュアも問わず有効な使い方だと思います。特に高校野球の場合は練習時間が限られていたり、練習環境が整っていなかったりする学校も数多くあります。場所や時間を選ばずリアルな練習を補完するツールとしてぜひ活用していただきたいですね。

この5年間V-BALLERの開発に携わってきて、リアルの世界では実現不可能なことでも、デジタルで補完できる領域はまだまだあると感じています。より多くの方に使っていただけるように、サービスモデルや仕様も含めてさまざまな展開をしていきますので、興味があるチームはぜひご連絡いただければと思っています。

【スピーカー】

里崎 智也
野球解説者・千葉ロッテマリーンズ スペシャルアドバイザー

金沢 慧
野球を専門とするスポーツアナリスト

神原 謙悟
Taiwan Rakuten Baseball,Inc 球団本部副本部長

キビタキビオ
フリーランススポーツライター

荒 智子
株式会社NTTデータ SDDX事業部


本記事は、一般社団法人日本スポーツアナリスト協会 / Japan Sports Analyst Association(JSAA)によるイベント、SAJ2022(スポーツアナリティクスジャパン2022)の事前収録・本収録での対談をもとに作成しています。

面白かったら「いいね!」お願いします!
WHAT’S NEW

新着記事を探す

KEYWORD

キーワードから記事を探す

PICK UP LINKS

関連するサイトを見る