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顧客の声の見つけ方~Twitterの小さな声から価値ある声を発見する~

テキスト化されているデータから顧客の声を拾うには、単語の出現数や他の単語との相関を見るだけでは不十分ではないでしょうか?では、どのようにすれば顧客のインサイトを紐解く「小さな声」にたどり着けるのか。「小さな声」に着目すべき理由、顧客の声を確認するのにTwitterが有効な理由から、Twitterを使った実際の分析事例まで、SDDX事業部 部長 尾崎 哲夫がご紹介します。

【記事執筆者】

尾崎 哲夫
株式会社NTTデータ ITサービス・ペイメント事業本部 SDDX事業部 マーケティングデザイン統括部 部長
大手通信会社向けシステム開発に従事後、NTTデータ経営研究所へ出向し戦略的アウトソーシング等のコンサルティング業務を経験。NTTデータに復帰後は日本語意味理解製品「なずき」事業や、ソーシャルリスニングサービス「なずきのおと」の立ち上げを実施。2012年に米Twitter社とアジア圏で初となるパートナー契約締結以降、Twitterデータ活用を中心としたデジタルマーケティング事業を推進中。

顧客の声 ~大きな声と小さな声~

コールセンターやSNSなどのテキスト化されているデータから「顧客の声」を分析するというと、真っ先に思い浮かぶのが頻出する単語のランキングや単語の相関図、内容による分類などを行うことではないでしょうか。確かに商品やサービスの不具合による炎上が発生していないか?今話題になっていることはどんな事か?などを調べるのであれば有効なアプローチといえるでしょう。一方で、顧客の声をきちんと把握するといった観点ではどうでしょうか?

例えば、弊社で提供しているTwitter分析サービス「なずきのおと」を使って、「ゆりかもめ」というキーワードが含まれるツイートを分析してみました(RTを除く)。6月13日週の一週間の頻出単語ランキング(補正前)を見てみると以下のようになります。

「なずきのおと」を使用して「ゆりかもめ」が含まれるツイートを分析した結果(2022年6月13日週データ)
「なずきのおと」を使用して「ゆりかもめ」が含まれるツイートを分析した結果(2022年6月13日週データ)

テレビ番組の影響により盛り上がった「#乃木坂工事中」以外は想像がつくようなワードとなっており、ここから顧客の声を読み取るのはなかなか難しいことがわかります。このような交通機関系の口コミで単語ランキングの上位にくる顧客の声は、電車遅延に対する不満や、混雑などに対する不満などがよく見かけるワードとなっていることが多く、分かっているけどなかなか企業側も手が付けられない領域であるケースがほとんどではないでしょうか。このように我々企業サイドが顧客のことを理解するうえで、本当に注目しなければならないのは、沢山あがっている「大きな声」ではなく、もっと別な観点での分析が必要なのではないかと私自身は考えています。

過去私が分析した事例や経験から、企業が注目すべき顧客の声は、数は少ないのですが世の中の潜在的な意思を反映した「小さな声」なのではないかと考えています。以降で、具体的な分析事例をもとに「小さな声」をどのように把握するのかを考えていきたいと思います。

小さな声の見つけ方~Twitterが有効?

それでは分かりやすい「大きな声」ではなく、「小さな声」を見つけるにはどのようなデータに対して、どのようにアプローチすればよいのでしょうか?

私自身のビジネスがTwitterを中心としたSNS分析を行っているからというわけではなく、顧客のインサイトを把握する上ではSNSは有効な情報源だと思います。理由としては、例えばコールセンターに寄せられるのはもっぱら通常の問合せ以外には影響の大きい問題に関する問い合わせやクレームとなることが多く、現状発生している問題を把握するには有効かもしれませんが、顧客のインサイトを示すようなものが含まれる可能性は低いのではないかと思います。一方で、SNSには誰でも容易に投稿できる特性から、問い合わせするほどではない程度のちょっとした不平・不満も投稿される傾向が見られます。この特性を踏まえて、今回はTwitterデータを使って実際に「小さな声」を見つけていきたいと思います。

次に、具体的な分析方法です。AIを使ったり統計手法を使ったりと色々なアプローチ方法が考えられるとは思いますが、今回は簡易な手法による分析アプローチにより分析していきます。分析にあたっての大きな問題点としては、数多く投稿されている声の中から不要な情報を如何に除去するかがポイントになりますが、言語解析の感性分析を主軸にしてアプローチを行ってみたいと思います。

Twitterを使って実際に分析した事例紹介

先ほどの「なずきのおと」に「ゆりかもめ」をキーワードとして登録したデータを掘り下げて見てみます。

単語ランキングでみるとあまり注目するような情報はありませんでしたので、違ったアプローチが必要になります。顧客のインサイトを知るうえでポイントとなるのは、精緻な数にあまり意味がないという点だと私は思います。「顧客インサイト≠声の数」を前提として考えることが重要で、少数でも定常的にみられる声を見つけることに注力し、まず粗くてもよいので不要な情報を除外して欲しいデータに如何に効率的に絞り込むかを考えます。

今回は「なずきのおと」の機能の感性分析(評判分析)を使うことで、その絞り込みを行います。感性分析は、文書における言葉の評価や感情が含まれている部分を抽出するための手法ですが、日本語には様々な言い回しがあるため、一般的な分析精度は適合率、再現率の双方の観点で見ると高い精度とは言えないレベルです。しかし、今回のようなケースでは精度よりも不要な情報を除いて絞り込むことがポイントとなるため、人の評価や感情が含まれるであろう情報をピックアップしてくれることで効率的に顧客のインサイトを手繰り寄せられるアプローチの一つとなりえます。

実際に分析してみると、「恐怖」という感情表現が数はさほどありませんが週間で定常的に投稿されていることがわかります(下図参照)。

「なずきのおと」を使用して「ゆりかもめ」が含まれるツイートを感性分析した結果(2022年6月13日週データ)
「なずきのおと」を使用して「ゆりかもめ」が含まれるツイートを感性分析した結果(2022年6月13日週データ)

「恐怖」にかかわる投稿とはどのようなものだろうか?とみてみますと、以下のような投稿が確認されました。

―――――(以下、実際の投稿文)
「ゆりかもめってこんな揺れるっけめちゃ怖いんだけど」
「久しぶりにゆりかもめ乗ったけど怖いわ」
「だいぶ高所恐怖症なのでゆりかもめがこわい」
「ゆりかもめのスピード、いつも怖い。」
「ゆりかもめ、めっちゃスピード出てるやんけーー 怖い〜」
「ゆりかもめ、ジェットコースター感あってちょっと怖い」
「ああああああああぁぁぁ まってちょっとまってゆりかもめの発進の挙動こわいいいい」
――――――

私自身は、「ゆりかもめ」が他の電車と比べて特別怖いといった印象はありませんでしたが、実際には怖いと印象を持たれている方々が一定数いることが分かります。実際にはわかりませんが、「怖い」からといって運営会社にクレームの電話が寄せられる可能性はほとんどないでしょうし、アンケートにおける選択項目には「怖い」が入ることもあまりイメージできないため、このような顧客のインサイトを把握することは難しいのではないでしょうか。企業としては、利用者に安全に関する取り組みをしっかりと説明して恐怖心を緩和するような取り組みを行うなど検討すると良いかもしれません。

次に、「都バス」について同じようにリサーチを実施してみます。こちらも定常的に出現している感性に注目して、どのようなことが言われているか探って見ます。定常的に出現している感性に「価値・裕福(低)」が確認できたため、中身をみてみると以下のような投稿が散見されました。

「なずきのおと」を使用して「都バス」が含まれるツイートを感性分析した結果(2022年6月13日週データ)
「なずきのおと」を使用して「都バス」が含まれるツイートを感性分析した結果(2022年6月13日週データ)

―――――(以下、実際の投稿文)
「今日は勝どき駅から都バス 月島→豊洲→有明テニスの森より安いし早い」
「東京ビッグサイトへのアクセス。 東京駅を経由する場合、 東京駅八重洲口から出る都バスが安い。 210円也。40分。」
「おはよう😊 早稲田から三ノ輪橋まで 都バスよりも安い170円 サンシャインに行くのによく使いました 始発から終点まで 目的なく行くもありでしょう」
「都バス上69という手もあるけど、こっちの方が安いな」
「都バスの安さに感動している」
「時間かかるけどお安いのよ都バス」
「バスで移動した方が楽説ありますよ〜 都バスなので安いですよ〜♪」
――――――

結構な頻度で「価格」に関する投稿が見られ、都バスの安さについての投稿や、他の交通機関と比較する投稿が見られました。このような声を踏まえて、都バスで行くことの「価格メリット」を路線単位でもっと打ち出していくと、利用者増や都バスの有用性アピールに繋がることが期待できるのではないでしょうか。上記以外にも、感性「難しさ(難)」などで、都バスの難しさに関する投稿が定常的にあることが確認できました。

―――――(以下、実際の投稿文)
「赤羽の都バス難しすぎる(間違えた)」
「都バス難解すぎる」
「渋谷~原宿は割りといいですよね! 代々木~原宿歩くよりも好きです🤭 都バスは中々に難解です🤣🤣ハードルがたけぇ」
「ゆきちゃんにも遊んで欲しいのよ😭ゆきちゃん忙しいから😆 最中買いに行ったのに、しっかり買ってきた😆で、都バス難しすぎた🤣 ちょっこりさんリベンジもしたいし、次こそは、ゆきちゃんも遊んで♥️」
「久々に都バスのったら普通に間違えてて草、踏んだり蹴ったりすぎる」
――――――

これらの投稿から、例えば搭乗するバスを簡易に判別できるような取り組みであるとか、乗り継ぎなどを簡易に確認できるような仕組みの提供など改善に取り組むとよいのではないでしょうか。具体的には、現在提供されているモバイルアプリの機能改善や積極的な利用を促す取り組みや、行先ごとに一目で判別しやすいようにバスの色を変更できるような仕組みなどが考えられます。

まとめ

今回は顧客の「小さな声」に注目して、マーケティングのヒントとなる貴重な意見の抽出に取り組んでみました。「小さな声」は「大きな声」にかき消されがちですが、企業がマーケティングを考えるうえで「小さな声」こそしっかりと目を凝らして見つめることが必要だと考えています。今後、マーケティングの高度化に向けて「小さな声」の見つけ方をより体系化して、効率的に発見できる仕組み作りを進めていきたいと思います。

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