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認定ファシリテーターが語る!「FORTH INNOVATION METHOD」による新規事業開発の変化

FORTH INNOVATION METHODは、新規事業のビジネスプランを組織的に創出するための手法です。この記事では、FORTH INNOVATION METHOD認定ファシリテーターの3名が、新規事業開発の現場におけるリアルな課題に対し本メソッド導入がもたらした効果について語ります!

FORTH INNOVATION METHOD対談の様子
対談の様子 左から岡田さん、岡本さん、千葉さん

岡田 洋己
株式会社NTTデータ 法人コンサルティング&マーケティング事業本部 法人コンサルティング&マーケティング事業部 エクスペリエンス統括部 課長代理

岡本 直也
株式会社NTTデータ インダストリ統括事業本部 交通・観光・エンタメ事業部 第1ビジネス統括部 シニア・エキスパート

千葉 かんな
株式会社NTTデータ インダストリ統括事業本部 自動車事業部 第1ビジネス統括部主任

「組織」のためのビジネスプラン創出メソッド、FORTH INNOVATION METHODとは?

―まずはFORTH INNOVATION METHOD(以下、FORTH)について教えてください。

岡本さん:FORTHは、組織が新規事業のビジネスプランを創出するためのメソッドです。オランダ人マーケターのハイス・ファン・ウルフェンさんが開発したもので、世界中に翻訳・展開されています。イノベーションを冒険に見立てた20週間のプログラムで、5つの島(ステップ)から構成されています。

FORTH INNOVATION METHODの特長
FORTHの特長

1. FULL STEAM AHEAD(全速前進でスタート!)

まずはプロジェクトのチームメンバーを選出し、全員で「イノベーションの使命」を作成・合意します。「なぜイノベーション創出に取り組むのか」「誰のためにどんな価値を作るのか」「どんなビジネスをめざすのか」などを議論し、組織の上位層とチームメンバー全員で「アサインメント(イノベーションの使命を記した書類)」を作成します。このアサインメントは、以降のプロセスで常に参照する大切な書類です。

2. OBSERVE & LEARN(観察と学び)

続いて、アサインメントを基にイノベーション創出に必要な知識と情報をリサーチします。テクノロジーや事例についての机上調査だけでなく、顧客像および彼らが抱える不満を明らかにするために観察やインタビューを行います。いきなりアイデアを出すのではなく、あらかじめ自分たちのイノベーションに関連するトレンドや事例、顧客を理解することがポイントです。

3. RAISE IDEAS(アイデアを出す)

そして、アイディエーションを行い初期のコンセプトを作成していきます。「もし自分がXXだったら…」などの強制発想の手法なども交えつつアイデア出しを行うため、チームによっては1,000個近いアイデアが出ることもあります。これらのアイデアをベースに5個~10個程度のコンセプトを作り上げます。

4. TEST IDEAS(アイデアをテストする)

作成したコンセプトに対し、実際の顧客から評価・フィードバックを収集します。テストによってコンセプトが実際に受け入れられるかを検証する重要なプロセスであり、ここでチーム内の評価と顧客の評価のギャップに気付くことも多いです。

5. HOMECOMING(帰還)

顧客からのフィードバックなどを取り込みながら、コンセプトをビジネスプランに仕立てていきます。コンセプトはそのままではビジネスにはならないため、このプロセスでしっかりとビジネス性も検討します。上位層に対する最終プレゼンを経て、事業化に向けて取り組むビジネスプランが選ばれます。

―FORTHの魅力はどんなところにありますか?

千葉さんFORTHの最大の特徴は、「組織の力学」を考慮したイノベーションメソッドであることです。上位層にとって現場の活動内容は見えづらいため、しばらくして確認したときに「イメージが違う」となるケースは多いです。結果的に、メンバーが考えたアイデアを根本から否定してしまう「ちゃぶ台返し」が起こってしまいます。それに対し、FORTHでは定期的に上位層を巻き込み、合意を取りながらプロセスを進めます。上位層が各ステップの要所に参加する設計になっており、「この範囲内でアイデアに意見できます」という権利を渡されます。このプロセスがファシリテーターによって守られるため、メンバーも上位層も常に納得感を得ながら検討を進めることができるのです。

岡田さん:また、FORTHは1人ではなくチームでアイデアを作れるようにプロセスが設計されている点も魅力です。新規事業ではアイデアを出した人とそれ以外の人で温度差ができてしまい、結果的に「アイデアを出した人だけが頑張る」という構図が起きがちです。そうならないために、1つのアイデアに全員の意見を取り込みながら進められるプロセスになっています。また、アイデアを選ぶときも全員で決めた「アサインメント」を基に進めていきます。

千葉さん:まるで赤ちゃんをみんなで育てていくイメージですね。全員が高い熱量を持ち、一体となってプロセスを進められるようになっています。

岡本さん:イノベーション創出の手法はいくつもありますが、千葉さんが魅力に挙げたように組織の力学を考慮したものは珍しいですよね。また、既存のビジネスプランを磨くための手法は多いですが、ゼロからビジネスプランを作るための手法は少ないように感じます。そういう意味でも貴重なメソッドだと言えます。

千葉さん:たしかに、新規事業開発の経験が全くない人でもゼロからビジネスプランを生み出すことができるのは大きな魅力ですよね。今まで大企業に勤めてきてイノベーションとは縁がなかった人たちでも、力を合わせてビジネスプランを生み出すことができます。

千葉さん
千葉さん

―近年、NTTデータ以外でもFORTHを採用する大企業が増えています。今、このメソッドが注目されている理由は何でしょうか?

岡本さん:まず、多くの企業が自らイノベーションを起こす必要性を感じ始めていることが挙げられます。新型コロナウイルスやDXなどの社会変化をきっかけに新規事業に取り組み始めた大企業にとって、FORTHが一つの助けになっています。

岡田さん:企業にとっては、期間と成果物が明確に決まっている点も採用しやすい要素になっていると思います。FORTHでは、「20週間で15個のワークショップ」というスケジュールと各回の目的・成果物があらかじめ決まっています。そのため、新規事業でありがちな「何も決まらない会議」が生まれる心配がありません。「20週間、稼働の20~25%を掛ければ一定以上洗練されたビジネスプランを生み出せる」という分かりやすさから経営層にも受け入れられています。

新規事業開発の壁を突破するために、認定ファシリテーターの道へ

―皆さんはなぜFORTHの認定ファシリテーターの資格を取ろうと思ったのでしょうか?

千葉さん:私は新規事業に取り組む中で、自分の武器となるものが欲しいと感じたことがきっかけです。過去にビジネスコンテストに出場した際は、「答えの出ない会議が続いて前に進まない」「企画書に落とす直前でちゃぶ台返しが起こる」「上位層の描くイメージと合わない」などの難しさを感じていました。また、自動車業界のお客さまと新規事業を共創する機会もありましたが、参加メンバーが元々持っていたアイデアを出し尽くしたあと、さらなるアイデアがなかなか出ず苦労するという状況に直面しました。私が進め方について助言することもありましたが、新規事業に関する経験の浅さや体系的にプロセスを理解できているか自信が持てないことで「口だけ」になってしまう感覚がありました。新規事業開発についてもっと自信をもって意見できるようになりたいと思い、認定ファシリテーターの資格を取ろうと決めました。

岡本さん:私のきっかけは、一人ではなく組織で新しい事業を進めるやり方を身につける必要性を感じたことです。今まで関わってきたサービスの立ち上げでは、自らが組織を引っ張りながら進めていく「牽引型」のやり方でプロジェクトを進めてきました。しかし、交通・観光業界大手のお客さま企業に対し新規事業を提案する際、牽引型だけでは自分の思考の枠を超えられないことを実感し、このスタイルの限界を感じました。お客さまと一緒に考えていく進め方が必要だと感じていた中でFORTHを知り、組織的にアイデアを生み出すための手法として身に付けたいと思ったことが資格取得の動機です。

岡田さん:私は「組織が再現性高く新規事業を作ることができるプロセス作り」に関心があったため、FORTHを学びました。私にとって、「新規事業によってお客さまに価値を提供し続ける組織をいかに創り、運営してくか」はここ数年の人生の問いです。以前からプロセスの開発やビジネスコンテストの設計など新規事業の制度設計にも携わってきましたが、どうしても属人性が高く、難しさを感じていました。FORTHは、プロセスだけでなく組織の力学もうまく考慮して設計されたメソッドだと感じています。このため再現性高く新規事業を創出できる組織づくりにも活かせるのではないかと思い、認定ファシリテーターを取得しようと考えました。

―認定ファシリテーター資格を取るための合宿があったと聞きましたが、参加してみていかがでしたか?

千葉さん:めちゃくちゃ疲れました(笑)。FORTH開発者のハイスさんと共に一日中ワークショップのファシリテーター役とメンバー役を体験して、普段の業務では使わない頭を使った感じがしました。

岡本さん:私は合宿中に顧客インタビューのワークショップでファシリテーターを経験しました。ファシリテーターは場を仕切るだけでなく、実際に自分でインタビューの手本を見せる必要があります。最初にやったときは、場を仕切ることだけ考えていたためうまく手本を見せられず、ハイスさんに「これじゃメンバーがインタビューできないよ」と止められました(笑)。

岡田さん:ファシリテーションのポイントはかなり細かくアドバイスされます。例えば、立つ・座るにも使い分けがあって、メンバーをリードしたいときは立って話しますが、相談やワークをするときは座って会話します。特に自分は体格が大きいので、「立ったときに威圧感を与えないように」と指摘されました(笑)。ファシリテーションをする上では、自分のことを理解することも大切です。

岡田さん
岡田さん

FORTH INNOVATION METHODがもたらしたポジティブな変化

―合宿を経て見事ファシリテーターに認定されましたが、認定を経て考え方や実際の業務に変化はありましたか?

千葉さん:資格取得の動機でもあった、新規事業の進め方に自信を持つということが実現できています。今までやり方を知らずに手探りで企画を作っていましたが、ひとつの拠りどころを持てるようになりました。以前はいきなりアイデア出しを行うこともありましたが、今はそのようなやり方では無理だと自信を持って言えます。また、ファシリテーション自体の奥深さにも気づいたため、自分の強みとしてさらに伸ばしていきたいと思っています。

岡本さん:私はアイデアを生み出すときの考え方が変わりましたね。まず、お客さまが抱えるフリクションについて、「お客さまの発言の根底にあるものは何か」をより深く考えるようになりました。お客さまインタビューにおいては、まるで玉ねぎの皮をむくように「なぜ?」を繰り返し、本質的な課題に近づけるようになっています。また、定義したお客さまの課題を基にメンバーを巻き込んだアイディエーションができるようになり、以前よりも質の高い発散をした上でアイデアを選べるようになりました

岡本さん
岡本さん

岡田さん:私はお客さまや社内の新規事業を支援する時、根拠のあるアドバイスができるようになりました。新規事業にはいくつかの失敗パターンがあり、それは進め方を見直すことで回避できます。例えば、「社内のビジネスコンテストで良いアイデアがなかなか出ない」という問題は多くの企業で起こっています。このような問題を抱えるお客さまに対しても、「こうした事象になっていませんか?」と具体的な課題や解決策を示せるようになりました。

―ファシリテーター認定後もFORTHについて学ぶ機会はあるのでしょうか。
千葉さん:社内に認定ファシリテーター同士のコミュニティがあり、毎週ミーティングを開催しています。そこは、FORTHの活用方法について議論したり、インタビューやアイディエーションなどの細かいノウハウを共有したりする場です。日頃の業務で携わる業界や専門とするスキルが異なる人たちが集まっているので、お互いに学び、高めあう関係になっています。

岡田さん:ちなみに、FORTHのつながりは社内だけでなく世界中にあります。開発者のハイスさん自身がメソッドに関するフィードバックを集めて改善を続けているので、世界中からメソッドの活用事例が集まっているんです。「みんなでFORTHをより良くしていこう」という文化が醸成されています。

社内外の新規事業開発における共創パートナーに

―最後に、今後FORTHを活用して実現したいことについて想いを聞かせてください。

千葉さん:私は、自動車業界のお客さまと共創しながら新規事業を作っていきたいです。これまで何度かアイディエーションの機会がありましたが、ニーズ検証やアイデア選出の方法など、もっとうまくやれた部分があると思っています。今年度はこのプロジェクトにFORTHを適用し、お客さまと共に質の高いアイデアを生み出したいです。また、社内でもFORTHを積極的に活用してアイデアを生み出しながら、ファシリテーターとしての経験を積んでいきたいです。

岡本さん:私は交通・観光業界のお客さまとのプロジェクトを通じ、「人々がもっと日常の移動や旅を楽しめるような世界」を作りたいと思っています。この数年は移動の在り方を見つめ直す期間になりましたが、実際に現地に行くことの価値を改めて感じます。移動の価値を再認識している今だからこそ、イノベーションの機会があると考えています。FORTHの全てのプロセスを当てはめるのではなく、お客さまに合わせてFORTHの「エッセンス」を適用し、結果的にFORTHが活用されている状態をめざしていきたいです。

岡田さん:私は、NTTデータが新規事業開発の共創パートナーとしてお客さまに選ばれ、評価されるようにしていきたいと考えています。NTTデータにはFORTHだけでなく、新規事業開発に関連するさまざまなアセットがあります。例えば、サービスデザインやアジャイル開発などの多様な専門人材、業界ごとに描いたForesight(未来像)、Thought Leadership(注1)活動を通じて獲得したナレッジ、そして独自手法であるビジネスデザインスプリント®(注2)など。これらを組み合わせて、単発・断片的な支援にとどまらない「事業開発をE2E(エンドツーエンド)で実現できる共創パートナー」になることが求められていると考えています。実際に複数のアセットを組み合わせたプログラムの整備を始めており、既にいくつかを公開しました。将来的には「事業開発を一緒にやるならNTTデータだよね」と言ってもらえるようにしていきます。

注1)特定のテーマに対し、企業がその解決策となりうる「主張、思い、理念など(=Thought)」を掲げ、社会や顧客からの共感と評判を生み出す取り組み。
注2)NTTデータで開発された新規ビジネス企画ドリル。FORTHとも相性がよく、2つを組み合わせたワークショップも行われている。詳しくはこちら

千葉さん:社内でも社外でも、新規事業開発で困っている人がいたら気軽に声を掛けてほしいですね。認定ファシリテーターだから凄いということでは全くないので、新規事業の悩みについて一緒に考えられたらと思います。

3人も参加したFORTHの認定ファシリテーター養成合宿が2023年10月に開催されます。企業内のイノベーション創出にお悩みの方はこちらからお申し込みください!

FORTH INNOVATION METHODをもっと知りたい方へ

NTTデータが運営する他のオウンドメディアでも、FORTHに関する記事が同時公開されています。FORTHについてもっと知りたい方は、ぜひ本記事と併せてご一読ください!

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