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Sansanのデータストラテジストが語る、顧客価値提供のためのデータ活用とは?

2019年11月28日(木)、「【顧客価値提供のためのDX】データストラテジスト直伝!最強のデータ活用メソッド」と題し、Sansan株式会社デジタル戦略統括室室長で、一般社団法人CDO Club Japan事務局マネージャーも務める柿崎充氏に講演いただきました。NTTデータ社内での開催にも関わらず、当日は200名を超える出席があり、関心の高さがうかがえました。

今回、デジタルマーケティング領域におけるデータ活用をどうビジネスにしていくかのポイントについて、デジタル変革の本質から人材についてまで幅広く講演頂きました。この記事ではその一部をご紹介します。

デジタル変革の本質はプラットフォーム革命

冒頭、柿崎氏は、デジタル変革の目的を、「これまでの労働生産性向上を目的とした働き方改革と、資本生産性を向上するためのコーポレートガバナンス改革の両方を包含するもの」と説明しました。同時に、「GDP低下や人口減少に直面する日本企業は、一般的にデジタル変革の目的は生産性向上と考えがちである」とも論じ、その認識を改めるためには、「プラットフォーム企業」について考えることが重要だと述べました。

柿崎充

「プラットフォーム企業とは、複数の市場において、外部の生産者と消費者、あるいは外部の情報やモノ、サービス資源などを相互に結び付け、価値を生み出す企業のことです。例えば、Googleは検索サービスやモバイルOSといった市場において、無料でサービスを提供する一方、収益は別市場である広告から得ています」(同氏)

柿崎氏はこのように述べ、デジタル変革とは、プロダクト企業がプラットフォーム企業へと変革することであるとの見解を示しました。

プラットフォーム企業による価格のコントロール

では、プラットフォーム企業に変革することとは具体的にどういうことなのか。柿崎氏はAmazonが提供するAmazon Goを一例に説明します。

「日本では『無人』であることに着目されがちなAmazon Goですが、その真の価値はカメラとセンサーですべてのデータを取得することにあると言えます。Googleの例と同様に、Amazonはデータ取得のために小売店には無料でAmazon Goのサービスを提供し、そこで得たデータをメーカーに提供することで収益を得るかもしれません」(同氏)

プラットフォーム型ビジネスモデル

加えて、柿崎氏は、AmazonCEOであるジェフ・ベゾス氏の発言を引用し、「ジェフ・ベゾス氏は、『競争力を確保するため、顧客にできる限り低価格を提供することに注力している。私はこれを極めて重視し、自ら全面的に関与している』と言っている。これはつまり、データを制する者が価格を制する時代になっているということだ」と述べました。

また、柿崎氏は、生活レベルが向上したと感じる日本人が増加傾向にあるとの調査結果を示し、プラットフォーム企業の価格の考え方について、次のように説明しました。

「生活レベル向上は『インターネット上に登場してきた無料のサービス』による利便性向上の結果と言います。こうした低コスト・低価格は、デジタル技術によって実現したと単純に考えがちです。しかし、実際はプラットフォーム企業が、サービスを提供する市場においては低価格で市場を独占し、利益を得る市場ではその独占状態を利用して価格をコントロールすることで実現しているのです。」(同氏)

このように、プラットフォーム企業は、目的の異なる複数の市場を上手く使い分けることで、データの収集と収益確保を両立させていることが特徴です。また、こうしたデータを活用して、11人に適した値付けを行うことも、デジタルマーケティングの一例と言えるでしょう。

柿崎氏は、「これからは、製品の差別化ではなく価格の差別化。デジタル変革に取り組むうえで、これもポイントになります。」とまとめました。

プラットフォームからエコシステムへ

プラットフォーム戦略に最初に気が付いた企業はインテルだと柿崎氏は説明します。コンピュータ業界が、CPUから流通・販売まで1社がすべてを手掛ける垂直統合型から、CPUOSなど各レイヤーを異なる企業が手掛ける水平分業型へと変わっていることに気づいたのです。このようなレイヤー構造化は、今や自動車産業や金融業界といったあらゆる産業に当てはまる話になっています。

レイヤー構造化

レイヤー構造化した産業では、CPUがないとOSが動かないように、各企業は外部、他社があってこそ成り立ちます。「つまり、競争ではなく共創が必要となります。全てはエコシステムパートナーなのです。業界全体の底上げ、エコシステムのパイを育てることが大事です」と柿崎氏は言います。

そして、未開拓領域として柿崎氏が挙げたのが、IoTエコシステムです。
柿崎氏は、「プラットフォーム企業は、IoTデバイスでデータを自動的に集め、プロダクト企業にそれを売ることができます。また、プロダクト企業自身も原材料を『モノ』から『データ』へと変えることができます。例えば、タイヤメーカーがIoTデバイス化したタイヤを無料で配布し、そこから取得したデータを保険会社に売る、さらに自ら保険会社になるといったデジタル変革が可能です」との見解を示しました。

デジタル変革を進める人材

最後に、デジタル変革を進める人材について、柿崎氏より虫のノミを例にしたお話がありました。

虫のノミを例にしたお話

「ノミは箱に入れると、跳んで外に出ていきます。箱に蓋をすると、跳び出ることはできません。そこで、一回閉じた蓋を取ってみても、もうノミは外に跳び出すことはなくなるのです。再度跳べるようにするためには、外部から新しいノミを入れます。すると、新しいノミが外に跳び出るのを見て、他のノミもまた跳び出せるようになるのです」(同氏)

柿崎氏の考えによれば、この例における新しいノミとは、「パラダイムシフトに気づく人」とのことです。それは、年齢が若いか、その分野に入って日が浅い人、つまり「新参者」が多いといいます。つまり、「大事なのはミレニアル世代の活用。日本は若者を評価できていない」と柿崎氏は言います。

柿崎氏は、「イノベーションとは何かを新しくすることではなく、自らを新しくすることです。最も創造性の高い人とは、他の人とのつながりを活用する人なのです。一貫して伝えたいことは、自社の枠組みを超えることです」という言葉で講演を締めくくりました。

デジマイズム編集部による振り返り

今回の柿崎氏の講演、かいつまんだ紹介ではありましたが、デジタルマーケティング領域の新規サービス創出やデジタル変革推進に取り組んでいるみなさまにとっても示唆に富んだ内容だったのではないでしょうか。

例えば、プラットフォーム企業を「オフラインの場に接点を持つ企業」と考えると、小売業の企業のみならず、多くの企業にとって、IoTデバイスを活用してオフラインのデータを集めることが、新たな時代の強みになり得ると考えます。そして、そのデータを自社のマーケティングに活用するだけでなく、プロダクト企業へ提供することで、プラットフォーム企業としてエコシステムのポジションを築くことができる可能性を秘めています。

私たちが取組中のレジ無しデジタル店舗やアバターによるデジタル遠隔接客も、店舗の課題解決に加え、オフラインデータ収集の観点でも重要なものと考えています。こうしたデータ活用のビジネスプランの策定についても、ぜひご相談ください。

レジ無しデジタル店舗
アバターによるデジタル遠隔接客

また、デジタル変革を進める人材についても、柿崎氏から「周りを巻き込んでデジタル変革を進めるという強いリーダーシップを持った人が現れると変わる。」との言及があった通り、マインド面の変革も非常に重要と考えます。

私たちSDDX事業部の人やチームの紹介は別記事に譲りますが、今回の講演のような機会を始め、引き続き、デジタル変革のスキル・マインド向上に取り組んでいきたいと思います。

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