
前回に引き続き、ニューヨークのデジタル店舗の現在地をご紹介するこの記事、後編の今回は、ファッションやコスメなどの専門店系と、番外編の二つに分けてお届けします!
【専門店系】ブランドストーリーを表現する新型店舗の登場
#NIKE:買い物だけではないクールな店内体験を提供
入店してすぐに気付いたのは、店内1階のバスケットコートで1on1をプレーする二人の姿。2階へ続く階段からも、その光景を撮影する人たちが多く見られました。従業員によると、このプレーコートは予約制で利用でき、多数設置されたカメラで色々な角度から自分のプレーが撮影されて、後からメールで送付してもらい見ることができる、という人気サービスとのこと。
買い物目的だけでなく、ナイキのイメージに合うようなクールな体験目的でも、行きたい!と思わせる店舗として話題を作っている良い例ですね。また、そのクールな体験を、SNSなどを通じてシェアしてもらい、ナイキのイメージをさらに高めてもらいたいとのねらいも感じ取れます。
#Glossier:SNS投稿を促す、”映え”に特化した店舗設計
ティーンを中心に大人気のニューヨーク発コスメブランドGlossier。店舗で買ってもらうことにこだわらないためか、店頭の商品を試しやすいような売場になっていて、かつ従業員が積極的に商品を勧めてくることはありませんでした。
また、SNSでの話題作りを狙ったインスタ映えスポットが至るところに配置されていたのも印象的です。実際にSNSで検索すると、店内で撮影したおしゃれな写真の投稿や記事が多く見つかりましたし、私たちが訪れた時にも、インフルエンサーらしき方が撮影している場面にも遭遇しました。SNSでターゲットとする若年層を中心にうまくブランディングできていることを実感することができました。
#VANS:店内体験を通して伝わる企業イメージ
色鮮やかなシューズが並んだ店内でひときわ特徴的だったのが、シューズのデザインカスタマイズサービス。店頭のタブレット端末で自分好みのシューズをデザインすると、後日ECサイトからシューズを購入できます。店内には、サンプルのシューズが数多く展示されています。
デザインのカスタマイズは、従業員のガイドがなくとも直感的に操作できるよう、シンプルなUIで作られているので、気軽にシューズデザインにトライできました。シューズを3ゾーンくらいに区切り、各ゾーンのデザインを豊富な種類の柄やカラーから選択できます。カスタマイズ体験を通じて、VANSらしい「デザインの多様性」をお客さまにうまくイメージ付けているよう感じられました。
【番外編】場の特性に合わせたユーザへの気遣いを感じるサービスたち
番外編は、ニューヨークで話題のキオスクと、地下鉄の駅です。デジタル活用だけでなく、店舗や駅といった場が持つ特性をサービスに活かしている事例をご紹介します。
#NEW STAND:気の利いた無料サービスで地元住民の来店動機をつくる
ニューヨーク生まれのキオスク。米国に5店舗出店していて、2020年中には六本木にも展開予定のようです。「地元で話題を作れる商品」をコンセプトに、従業員がトレンド調査して商品を決定、数週間で入れ替えを行い、鮮度の高い売り場を作っている印象でした。
印象に残ったのは、傘やモバイルチャージャーの貸し出し、ヨガ教室といったサービスがアプリ会員になれば無料で受けられること。単なる割引やクーポン発行ではなく、そのキャンペーン費用を無料サービスに充てることによって、地元住民の来店のきっかけを上手く作り出していました。鮮度の高い話題商品と併せて、何度も足を運びたくなる仕掛けが徹底されていると感じました。
#New York City Subway(Jay St-Metro Tech Station):駅の狭さを考慮した安全・便利なデジタル活用
地下鉄の駅では、「NaviLens(スマホカメラで情報を読取り、位置情報などを画面表示や音声で案内するソリューション)」のタグ(QRコードのようなデザインの特殊タグ)がいたる所に見られました。タグをスマホアプリで読み込むことで、スマホ画面上の矢印表示と音声で目的地の方向を案内してくれるサービスです。
このタグは、さまざまな角度から読み取れることが特徴で、実際にタグのほぼ真下からでも読み取ることができました。狭い地下鉄駅構内で、安全かつ確実にタグを読み取ることを考えると、従来のQRコードよりも利便性は高いと感じました。また、カラフルで視認性の高いデザインのため、暗い駅構内であっても探しやすいことも、利便性の高さに繋がるように思います。今後、このような場面での普及が進むのではないでしょうか。
後編まとめ
専門店に関しては、どの店舗もモノを売る機能は保持しながらも、リアル店舗だからこそ果たすことができる「広報的な役割」を意識した店舗設計が印象的でした。特にNIKEとGlossierは、方法やその濃淡は異なるものの、明らかにSNSによる拡散を意識した店舗設計となっていました。売場面積と店舗売上を比例させるような考え方とは異なり、企業のブランディングやプロモーションへの貢献が期待されていることがうかがえます。
一方、番外編のNEW STANDは今までと同じ、店舗の売上を高めていく考え方だと思います。とは言え、割引に頼らない継続来店の仕掛けから、立地や店舗の特性を踏まえてお客さまに喜ばれるものを追求している姿が読み取れます。地下鉄駅構内の事例も含め、場が果たす役割をお客さまの視点から考え、求められるサービスを提供することの重要性を再認識させられました。
前編・後編を通じたまとめ
今回の店舗視察を通した印象を一言でいうと、ニューヨークの現在地は「デジタルトランスフォーメーションの過渡期に入った」です。技術的に全く新しいものが次々と導入されているのではなく、2~3年前に登場したデジタルサービスをしっかりと定着・活用し、いかに多くのお客さまに満足してもらうか、そしていかに企業や店舗の利益に還元できるかをじっくりと取り組んでいる企業が増えたように感じました。
そういった中で、リアル店舗における新型店舗の存在も印象的でした。店舗で特別な体験を提供することで、メディアやSNSなどで話題になることをねらう、つまり「増床=売上拡大」ではなくなってきているこの時代を象徴しているように感じられました。

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